
農地の適正な利用や保全を目的とした法律には「農地法」「基盤法(農業経営基盤強化促進法)」「農振法(農業振興地域の整備に関する法律)」「農地中間管理事業法」などがあります。
これらの法律は、農業経営の安定と農地の有効活用を促進するために重要な役割を果たしています。
本記事では、それぞれの法律の概要とポイントを行政書士がわかりやすく解説します。
1. 農地法|農地の権利移転・転用を規制する法律
農地法は、農地の適正な利用を確保し、食料生産を維持するために、以下の規制を設けています。
① 農地の権利移転・設定の制限(農地法第3条)
- 農地を適正に利用する者でなければ、売買や貸借などの権利取得が認められません。
- 農業委員会の許可が必要で、無許可の取引は無効となります。
- 違反者には罰則が科される場合があります。
② 農地転用の規制(農地法第4条・第5条)
- 農地を宅地や工場用地などに転用する場合、行政の許可が必要です。
- 許可を受けずに転用した場合、原状回復命令や罰則が科されることがあります。
③ 農地の賃借権の保護(農地法第16条~18条)
- 農地の賃貸借契約の対抗力、法定更新、解約条件などが規定されています。
- 借り手が適正に農地を利用できるよう、権利が保護されています。
④ 遊休農地への対応(農地法第32条~42条)
- 農業委員会が毎年、地域の農地利用状況を調査し、遊休農地を特定します。
- 遊休農地の活用を促進するため、農地中間管理機構などを活用し、適切な利用者に引き継ぎます。
2. 基盤法(農業経営基盤強化促進法)|農業経営の発展を支援する法律
基盤法は、農業経営の安定と発展を目的とし、経営改善や農地の集積を促進するための制度を整えています。
① 認定農業者制度・青年等就農計画制度
- 認定農業者制度:5年後の経営目標を盛り込んだ「農業経営改善計画」を市町村に申請し、認定を受けることで、低金利融資や税制優遇、補助金などの支援を受けられる。
- 青年等就農計画制度:新規就農者向けの支援制度で、認定を受けることで無利子融資や経営開始資金を利用可能。
② 農業経営基盤強化促進事業
- 農地の集約・利用権設定を促進するための各種事業が含まれる。
- 農地中間管理機構を活用し、担い手への農地の移譲を推進。
3. 農振法(農業振興地域の整備に関する法律)|農業振興地域を計画的に整備
農振法は、農業の健全な発展と国土資源の合理的な利用を目的とし、「農業振興地域制度」を設けています。
① 農業振興地域の指定
- 都道府県知事が国の指針に基づいて「農業振興地域」を指定。
- 指定を受けた市町村は、農業振興地域整備計画を策定する。
② 農用地区域の設定
- 農用地区域(青地)に指定された土地は、農業目的以外での利用が制限される。
- 農地転用や開発行為には厳しい規制があるため、事前確認が必須。
③ 目標管理と進捗公表
- 農林水産大臣が、各都道府県の農地確保状況を毎年公表し、目標達成を管理。
4. 農地中間管理事業法|農地の集約化と活用を推進
農地中間管理事業法は、農業経営の効率化を目的として、農地を担い手へ集約する仕組みを整備しています。
① 農地中間管理機構の役割
- 各都道府県に設置された農地中間管理機構が、耕作が難しくなった農地を一時的に借り受ける。
- 必要に応じて農地の基盤整備を行い、担い手へ貸し付ける。
② 特例措置
- 機構からの農地取得には農地法の許可不要。
- 法定更新の規定が適用されず、スムーズな農地の流動化が可能。
まとめ|農地の活用には法律の理解が不可欠
農地を取得・貸借・転用する際は、「農地法」「基盤法」「農振法」「農地中間管理事業法」などの規制を遵守する必要があります。
特に、許可を得ずに農地を転用した場合、罰則や原状回復義務が発生するため注意が必要です。
農地の売買・貸借、転用に関する手続きは複雑なため、行政書士に相談することでスムーズな手続きが可能になります。
農地に関するお悩みは、亀田行政書士事務所までお気軽にご相談ください。