農地所有適格法人とは何か? 〜その要件とメリットについて〜:東京都北区 亀田行政書士事務所

こんにちは、亀田行政書士事務所です。本日は、「農地所有適格法人」について詳しく解説いたします。この法人は、農地の所有権を法人名義で取得できる特殊な要件を満たしている法人です。以下では、農地所有適格法人の要件やメリット、注意点について詳しく見ていきます。

農地所有適格法人の概要

農地所有適格法人とは、農地法第2条第3項に定められた要件を満たしている法人であり、農地の所有権を取得できる法人を指します。ただし、国や県、農業委員会などが許可・認可するわけではなく、あくまで「要件」を満たしているかどうかが確認されるものです。

農地等の所有権移転や貸借手続きにおいて、農地法第3条の許可申請や中間管理法に基づく農業委員会の審査の際に、申請した法人が要件を満たしているかが確認されます。これに基づき、許可または不許可が決定されます。

重要なポイント

農地を所有したい法人が3条申請を行い、農地所有適格法人の要件を満たしている場合、所有権の取得が可能です。要件を満たさない場合は、所有権を取得できず、賃貸借によって農地を使用することになります。

なお、法人名の表記には注意が必要です。「農地所有適格法人○○株式会社」は、まちがった表現で、正しい表現方法は、農地所有適格法人の要件を満たす「株式会社○○」となります。

農地所有適格法人のメリット

農地所有適格法人には、以下のようなメリットがあります。

  1. 農業経営基盤強化準備金制度を利用できる
  2. 肉用牛の売却に関する課税の特例を受けられる

ただし、農地所有適格法人として農用地の権利を取得し、耕作等の事業に供している場合、事業年度終了後3カ月以内に、農地の所在するすべての農業委員会に「農地所有適格法人報告書」を提出する必要があります。要件を満たさない場合は、農業委員会から必要な措置が勧告されることがあります。

農地所有適格法人の要件

1. 法人形態要件(農地法第2条第3項本文)

農地所有適格法人は、以下の法人形態である必要があります。

  • 株式会社(株式譲渡制限会社に限る)
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 合同会社
  • 農事組合法人

2. 事業要件(同第2条第3項1号)

法人の事業として、農業およびその関連事業の売上高が、全体の売上高の過半を占める必要があります。

農業とは:耕作、養畜、養蜂、養蚕

関連事業とは:自ら生産する農畜産物を原料とした加工や販売、農作業の受託、農業と併せ行う林業

加工例の注意点:自ら生産するニンジンを使ってジュースを作る場合、自ら生産するニンジンが2割、仕入れたニンジンが8割でも、関連事業に含まれます。しかし、仕入れた原料のみでの加工は対象外となります。また、自分の農場で作ったレタスを使ってサラダを提供するレストランの経営も、関連事業に該当します。

3. 議決権要件(同第2条第3項2号)

農地所有適格法人の総議決権または総社員の過半は、以下のいずれかに該当する者でなければなりません。

  • 農地の権利提供者
  • 法人の農業に常時従事する者
  • 基幹的な農作業を委託した個人
  • 地方公共団体、農協、農地中間管理機構、農業法人投資育成事業承認会社など

特例:親会社からの出資が子会社の農業経営改善計画に基づく場合、親会社は農業関係者として扱われ、出資割合が1/2以上でも許可されます。

4. 役員(経営責任者)要件(同第2条第3項3・4号)

・農地所有適格法人の理事または取締役等の過半の者が、その法人 の農業に常時従事する構成員であること。なお、認定農業者である農地所有適格法人に常時従事する理事等は、出資先の農地所有適格法人が認定を受けた農業経営改善計画に基づいて、出資先の法人の役員を年間30日以上の農業従事で兼務することが可能です。
農業従事とは:農作業および販売業務を指します。つまり、理事や役員が農作業でなくとも、販売業務に携わればいいということになります。

その法人の理事等または法人の農業について権限と責任を有する使用人のうち1人以上の者が、法人の農作業に原則年間60日以上従事すること。
農作業とは:実際の農作業になります。つまり、農場長がマネジメントだけでなく、実際の農作業に携わればいいということになります。

農地所有適格法人の報告義務

最後に、農地所有適格法人は、事業年度終了後3カ月以内に、農地の所在するすべての農業委員会に報告書を提出しなければなりません。要件を満たしていない場合、農業委員会から必要な措置が勧告されることがあります。

おわりに

農地所有適格法人としての制度は、農業経営を円滑に進めるための大きなメリットを提供します。しかし、要件や報告義務をしっかりと理解し、適切な対応を行うことが必要です。不明点がある場合は、ぜひ亀田行政書士事務所までご相談ください。

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