農地法における「農地」と「採草放牧地」の定義と規制について

農地を適切に管理・活用するためには、農地法に基づく「農地」や「採草放牧地」の定義を正しく理解し、どのような規制が適用されるのかを把握することが重要です。本記事では、農地法上の「農地」と「採草放牧地」の定義、判断基準、および規制について詳しく解説します。

1. 農地法上の「農地」とは?

農地の定義

農地法では、「農地」とは 耕作の目的に供される土地 を指します。ここでいう「耕作」とは、土地に労働や資本を投じ、肥培管理を行って作物を栽培すること を意味します。

つまり、以下のような管理が行われる土地は、農地に該当します。

  • 耕うん
  • 整地
  • 播種(種まき)
  • 灌漑(かんがい)・排水
  • 施肥
  • 農薬散布
  • 除草

農地に該当するかどうかは 「現況主義」 に基づいて判断されます。すなわち、土地登記簿上の地目が「農地」であるかどうかではなく、 実際に農作物が栽培可能かどうか によって決まります。

耕作されていない土地は農地に該当するのか?

現に耕作されていない土地であっても、草刈りをすれば耕作可能な土地(休耕地や耕作放棄地など)は農地に該当します。これは、平成12年6月1日付「農地法関係事務に関わる処理基準」 によって定められています。

ただし、以下のような条件に当てはまる土地は、農地に該当しないと判断されることがあります(平成20年4月15日付「耕作放棄地にかかる農地第2条1項の農地に該当するか否かの判断基準」より)。

  • 人力または農業機械では耕作が困難な土地
  • 物理的条件の整備計画がなく、農業的利用が見込めない土地
  • 森林化してしまい、農地に復元することが著しく困難な土地
  • 周囲の状況から見て、農地に復元しても継続的な利用が難しい土地

このような土地は、登記簿上「農地」となっていても、農地法上は農地ではないと判断されます。その場合、農地法第4条・第5条の許可申請や「非農地証明」の取得 により、地目変更を行うことが可能です。

2. 採草放牧地とは?

採草放牧地の定義

農地法上、「採草放牧地」とは以下のような土地を指します。

  • 耕作目的以外の土地で、主として牧草の採取や家畜の放牧のために利用される土地

採草放牧地の判断基準

採草放牧地についても、農地と同様に「現況主義」 に基づき、土地の実態から判断されます。登記簿上の地目が「山林」「原野」「雑種地」であっても、 実際に牧草の採取や家畜の放牧が行われていれば、採草放牧地と認定される可能性があります

また、以下のような利用形態がある場合も、採草放牧地として認められることがあります。

  • 採草地(牧草の採取が目的)
  • 放牧地(家畜の飼育・放牧が目的)

このような土地も、農地と同じく農地法の規制を受けるため、 売買や転用には許可が必要 です。

3. 施設園芸と農地法の関係

近年、農業の高度化に伴い、農業用ハウスなどの施設園芸が発展しています。これに関連して、平成30年の農地法改正では、「農作物栽培高度化施設」の制度が導入されました。

農作物栽培高度化施設とは?

「農作物栽培高度化施設」とは、農地に農業用ハウスを設置しても、一定の要件を満たせば農地としての扱いを維持できる制度 です。

以前は、ハウスの底面をコンクリート張りにすると農地とは認められず、農地転用許可が必要でした。しかし、平成30年の改正により、 事前に農業委員会に届出を行えば、コンクリート張りでも農地として扱われるようになりました

高度化施設の基準

農作物栽培高度化施設と認定されるためには、以下の基準を満たす必要があります。

  1. 農作物の栽培を主目的とすること
  2. 周囲の日照に影響を及ぼさないこと(施設の高さや日影時間の基準あり)
  3. 排水が適切に処理されること
  4. 行政庁の許可を受けていること
  5. 土地所有者の同意を得ていること(借地の場合)
  6. 標識を設置すること(施設が農地として認定されていることを示すため)

また、以下のような設備は、農作物栽培高度化施設に含めることができます。

  • 農作業場、通路、堆肥置き場、ボイラー設備 など

一方、事務所や駐車場などは「農地」として扱われないため、転用手続きが必要 になります。

4. まとめ

  • 農地とは:耕作の目的に供される土地であり、現況に基づいて判断される
  • 採草放牧地とは:牧草の採取や家畜の放牧に利用される土地
  • 農地・採草放牧地は、農地法の規制を受けるため、売買や転用には許可が必要
  • 農作物栽培高度化施設は、事前届出を行うことでコンクリート張りでも農地扱いが可能

農地や採草放牧地を適切に活用し、農地法の規制を遵守することが、スムーズな農業経営につながります。農地の売買・転用などに関してお困りの方は、亀田行政書士事務所 までお気軽にご相談ください。