
こんにちは。亀田行政書士事務所の亀田です。今回は、相続が発生したときに注意すべき「資金移動」の問題について、法律的な根拠を踏まえて解説します。また、死亡届が自治体に提出された際に銀行や税務署へ通知が行くのか、そしてその後の調査があるのかという点についても取り上げます。相続手続きの基礎知識として、ぜひお読みください。
相続発生時に資金移動をしてはいけない理由
相続が発生した場合、被相続人(亡くなられた方)の財産は法律上「相続財産」となり、すべての相続人が共同で管理するものとされています。このため、相続が確定するまでの間に勝手に資金移動を行うことは法律に違反する可能性があります。以下に具体的な法律の根拠を示します。
1. 民法第898条(共同相続の効力)
「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」
被相続人の財産は相続人全員の共有財産となるため、相続人の1人が勝手に財産を移動・処分することは違法です。
2. 民法第899条の2(遺産分割前の管理)
「相続人は、相続財産の分割が行われるまで、その全部を共同で管理する。」
財産の分割が完了するまでは、相続人全員が協議の上で財産を管理する義務があります。したがって、相続人の1人が勝手に資金を移動した場合、他の相続人の権利を侵害する行為とみなされる可能性があります。
3. 民法第915条(相続の承認または放棄)
相続人は、相続開始を知った時から3か月以内に相続の承認または放棄を選択することができます。この期間中に資金移動を行うと、他の相続人の権利や判断を妨げることになるため、慎重に行動する必要があります。
資金移動がもたらすリスク
相続開始後に勝手に資金移動を行うと、次のようなリスクが生じる可能性があります:
1. 他の相続人から損害賠償請求を受ける
不正な資金移動は、他の相続人に対する権利侵害となり、民事訴訟の対象となる場合があります。
2. 遺産分割協議が混乱する
勝手な資金移動が発覚すると、相続人間の信頼関係が損なわれ、遺産分割協議が難航する原因となります。
3. 刑事責任を問われる可能性がある
特に、被相続人の財産を私的に使用した場合、**横領罪(刑法第252条)**に問われる可能性もあります。
死亡届提出後に銀行や税務署へ通知が行くのか?
「死亡届が自治体に提出されると、銀行や税務署に通知が行き、調査が入る」という話を聞くことがありますが、これは一部正確ではあるものの、誤解を含んでいます。以下に事実を整理します。
1. 銀行への通知は行われない
死亡届を自治体に提出した場合、その情報が直接銀行に通知されることはありません。しかし、金融機関は独自の方法で顧客の死亡情報を把握する場合があります。
• 市区町村の戸籍システムや新聞のお悔やみ欄の確認
• 相続人からの報告
被相続人の死亡が確認されると、銀行は口座凍結を行い、不正な引き出しを防止します。
2. 税務署への通知は行われる
死亡届が提出されると、自治体はその情報を税務署に通知します。これは、相続税の課税対象財産を適正に把握するためです。
• 税務署は死亡届に基づいて相続財産の調査を行う場合があります。
• 高額の資産を保有している場合や、相続税の申告義務がある場合は、特に注意が必要です。
遺産分割前の適切な対応方法
資金移動や相続手続きを進める際は、必ず以下のステップを踏むようにしましょう:
1. 被相続人の財産を正確に把握する
預貯金、土地、建物、株式、保険など、すべての財産を一覧化します。
2. 口座凍結を確認する
金融機関に被相続人が亡くなったことを報告し、必要な手続きを確認します。
3. 遺産分割協議を進める
相続人全員で話し合い、財産分割について合意します。この際、遺言書の有無も確認しましょう。
4. 専門家に相談する
行政書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
相続が発生した際、資金移動を勝手に行うことは法律で禁止されており、特に民法の規定に基づいて慎重に対応する必要があります。また、死亡届が提出されると、税務署への通知が行われるため、相続税の申告準備も速やかに進めることが求められます。
亀田行政書士事務所では、相続手続き全般についてサポートしております。資金移動や財産分割の進め方でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。