遺言書作成フローチャート

1.遺言書の必要性を確認する

• 自分の財産をどのように分けたいか考えます。

• 例:相続人間での争いを防ぎたい、特定の相続人に多く渡したい、寄付をしたいなど。

• 遺言書がない場合、法律で定められた「法定相続分」に基づいて財産が分けられることを理解しましょう。(民法887、889、890、900、907、938、939)

2. 遺言書の形式を選ぶ

遺言書には以下の3種類があります:

1. 自筆証書遺言

• 自分で手書きして作成。

• 2020年以降、財産目録はパソコン作成や印刷が可能。

• 保管方法に注意が必要(法務局での保管制度も利用可能)。

2. 公正証書遺言

• 公証役場で公証人が作成。

• 専門的なアドバイスを受けられ、紛失や改ざんのリスクが低い。

3. 秘密証書遺言

• 内容を秘密にしたまま公証人に証明してもらう形式(利用は少ない)。

以下はブログ用にわかりやすくまとめた「遺言書の種類ごとの比較」と「選び方のポイント」および費用や作成時間に関する内容です。

遺言書の種類


メリットデメリット
自筆証書遺言費用がほとんどかからない
自分の好きなタイミングで作成可能
改訂が容易
紛失や偽造のリスク
書式の不備があると無効になる可能性
家族が内容を見つけるのが困難な場合がある
公正証書遺言公証人が作成するため法的に有効性が高い
保管が確実(公証役場で管理)
紛失や改ざんのリスクがない
公証役場に行く必要がある
費用がかかる(公証人手数料・証人費用など)
証人2人が必要
秘密証書遺言内容を秘密にできる
公証人が証明するため信頼性がある
手続きが複雑
内容の不備があっても公証人が指摘しない
家族が発見しづらい

どの遺言書を選べばいい?判断基準

自筆証書遺言がおすすめの人

• 費用をかけずに手軽に作成したい人。

• 財産が少なく、相続人が法定相続分に納得する場合。

• 自分で何度も内容を見直したい人。

公正証書遺言がおすすめの人

• 財産が多い人、または相続人間でトラブルが予想される人。

• 遺言書の有効性を確実にしたい人。

• 高齢や病気で自分で書くのが難しい人。

秘密証書遺言がおすすめの人

• 遺言内容を誰にも知られたくない人。

• 公正証書遺言の信頼性を担保しつつ内容の秘密を守りたい人(利用頻度は少ない)。

費用と作成時間の目安

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
費用および報酬行政書士報酬のみ行政書士報酬および財産額に応じた公証人手数料(例:500万円の財産で約2万円)証人費用が別途必要行政書士報酬および財産額に応じた公証人手数料(例:500万円の財産で約2万円)証人費用が別途必要
法定費用なし公証人手数料(財産額に応じる)公証人手数料(定額約11,000円)
管理費年額3,900円(希望時)保管無料保管無料

一般的なスケジュール感(公正証書遺言の例)

1. 初回相談・依頼(1~2週間)

  • 依頼者の希望や財産状況をヒアリング。
  • 必要書類や情報のリストを作成し、収集方法を案内。
  • 遺言書の作成目的や費用、スケジュールを説明。
  • 委任契約を締結し、着手金を受領。

2. 必要書類の収集(1~3週間)

  • 依頼者や相続人に関する書類を収集(戸籍謄本、住民票、不動産登記簿謄本、預貯金情報など)。
  • 財産目録を作成。

3. 遺言書案の作成と確認(1~2週間)

  • 行政書士が遺言内容を設計し、遺言書案を作成。
  • 依頼者と遺言書案の内容を確認し、必要に応じて修正。

4. 公証人との打ち合わせ・公正証書遺言の準備(1~2週間)

  • 行政書士が公証人と打ち合わせを行い、公正証書遺言の内容を事前に確認。
  • 公証役場での手続きや証人2名の手配を実施。

5. 公正証書遺言の作成・署名(1日)

  • 公証役場で遺言者と証人2名が出席し、公証人立会いのもとで遺言書を作成・署名。
  • 作成後、原本は公証役場で保管され、正本や謄本が依頼者に交付される。

6. アフターフォロー

  • 遺言書保管方法や相続発生時の手続きについての説明。
  • 遺言内容の変更や見直しが必要な場合は再相談。

合計期間

通常のスケジュール感: 約1~2か月程度
※依頼者の準備状況や公証役場の混雑状況により変動。
※自筆証書遺言の場合は、作成後に法務局保管制度を利用する場合でも、1か月程度で完了可能。

Q&A集

Q:いとこへの相続はできますか

A:できます。ですが様々な検討が必要です

1. いとこへの相続(遺贈)の特殊性

いとこは法定相続人ではないため、財産を渡すには遺言書が必要です。遺言がなければ、いとこには財産を渡せません(遺留分を持つ法定相続人がいる場合、その影響も考慮する必要があります)。

2. 自筆証書遺言の特徴

メリット

  • 簡単に作成できる: 自宅で紙とペンがあればすぐに作成可能です。費用もかかりません。
  • 費用がかからない: 公証人の費用などが不要です。

デメリット

  • 形式不備のリスク: 形式が不備だと無効になる可能性があります。遺言の全文、日付、署名、押印が必要です。
  • 紛失・改ざんのリスク: 遺言が見つからなかったり、第三者に改ざんされるリスクがあります。
  • 検認手続きが必要: 自筆証書遺言を使うには家庭裁判所で検認が必要で、手間や時間がかかります。

いとこへの相続に自筆証書を選ぶ場合

  • 遺産が少額で、相続人間のトラブルの可能性が低い場合。
  • 信頼できる家族に保管を依頼し、リスクを軽減できる場合。

3. 公正証書遺言の特徴

メリット

  • 確実性が高い: 公証人が作成するため、形式不備の心配がありません。
  • 保管が安全: 公証役場に原本が保管されるので紛失や改ざんのリスクがありません。
  • 検認手続き不要: 家庭裁判所の検認を経ずに遺言を執行できます。
  • 証人が立ち会う: 証人が立ち会うため、後から遺言の有効性を争われるリスクが低いです。

デメリット

  • 費用がかかる: 財産額に応じて、公証人手数料や証人依頼費用が必要です。
  • 手間がかかる: 公証役場に出向いたり、証人を用意したりする必要があります。

いとこへの相続に公正証書を選ぶ場合

  • 遺産が高額または複雑で、遺言の有効性が争われる可能性がある場合。
  • 法定相続人が複数おり、紛争のリスクが高い場合。
  • 確実かつ安全に遺志を伝えたい場合。

4. おすすめの選択

いとこへの相続の場合は、公正証書遺言を選ぶことが安全で確実です。理由は次の通りです:

  • いとこは法定相続人ではないため、遺言の形式不備や紛失は致命的です。
  • 公正証書遺言であれば、遺言の有効性が強く保護されます。
  • 遺留分を持つ法定相続人(配偶者、子ども、両親)がいる場合でも、公正証書遺言は紛争予防に役立ちます。

5. 遺言書の作成費用目安

  • 自筆証書遺言: 基本的に無料。ただし、専門家に確認してもらう場合は5万円~10万円程度の費用がかかることもあります。
  • 公正証書遺言: 財産額に応じて公証人手数料がかかります(例: 5,000万円の財産なら約5~7万円程度)。証人を依頼する場合、1~2万円程度追加費用が必要です。

Q:自身で遺言書作成時、どういったミスが多いですか

A:いろいろありますので、下記をご覧ください

1. 法律上の形式不備

遺言書が無効になる最も一般的な原因です。

自筆証書遺言の不備

  • 全文が自筆でない: 自筆証書遺言は遺言者が全文を自書する必要があります。
    • 例: 遺言の一部をパソコンや代筆者が書いている。
  • 日付が不明確または欠落: 日付がない、曖昧な表記(例: 「令和5年元旦」「○月吉日」)は無効になります。
  • 署名・押印の欠落: 遺言者の署名がなく、印鑑も押していない場合。
  • 加筆・修正が不適切: 修正箇所に署名と押印がない、修正内容が不明確。
    • 例: 「◯◯円」を「◯◯万円」に訂正したが署名や押印がない。

公正証書遺言の不備

  • 証人が適格でない: 相続人や利害関係者が証人になると無効の可能性があります。
  • 遺言者の意思能力の欠如: 遺言作成時に遺言者が判断能力を欠いている場合、無効になることがあります。

2. 内容の不明確さ

遺言の趣旨が曖昧で、遺言執行が困難になるケース。

  • 受遺者の特定が不明確: 遺言で財産を渡す相手が特定されていない。
    • 例: 「長男の家族に全財産を遺贈する」と書いた場合、家族の誰が対象か不明。
  • 財産の特定が不十分: 財産が特定されていないため、相続時に争いが生じる。
    • 例: 「東京の不動産を次男に」と書いたが、複数の不動産が存在。
  • 割合の記載ミス: 分配割合が合計100%になっていない。
    • 例: 「長男に50%、次男に60%を相続させる」など。

3. 遺言内容が法に反する

法律上認められない内容が含まれている場合。

  • 遺留分の侵害: 配偶者や子どもなどの遺留分を侵害しており、後に訴訟になる可能性がある。
    • 例: 「長男には財産を一切相続させない」とだけ記載。
  • 無効な条件付き遺言: 法律に反する条件が設定されている。
    • 例: 「長男が結婚しなければ遺産を相続させない」。

4. 遺言書の保管や取り扱いのミス

遺言書の作成後に発生する問題です。

  • 紛失や破棄: 遺言書が見つからなければ、遺志が実現しません。
  • 改ざんや偽造: 自筆証書遺言は改ざんや偽造のリスクがあります。
  • 古い遺言の破棄忘れ: 最新の遺言書があっても、古い遺言書が残っていると混乱を招く。

5. その他の注意点

  • 意思能力の欠如の疑い: 遺言作成時、遺言者が認知症などで判断能力が低下していた場合。
  • 家庭裁判所の検認未実施(自筆証書遺言): 自筆証書遺言を発見した相続人が検認手続きをしないと遺言の効力が認められない。

書き損じを防ぐための対策

  1. 公正証書遺言を活用する: 公証人が作成するため、形式不備のリスクがありません。
  2. 専門家に相談する: 行政書士や弁護士にチェックを依頼し、不備を防ぎます。
  3. 最新の法律を確認する: 法律改正により新たな要件が追加される場合があります。
  4. 法務局での保管制度を活用(自筆証書遺言の場合): 2020年から始まった制度で、遺言の紛失や改ざんを防止できます。

Q:遺言者が入院している場合、どうすればいいですか

A:下記に流れを記載します

公正証書遺言作成の基本的な流れ

事前準備
遺言内容を明確にする(遺言者の意思を十分に確認する)。
遺言者の財産内容を整理し、必要書類を用意する。

公証役場への依頼
公証人に遺言作成を依頼し、出張を要請します。
病院や療養先で作成する旨を伝えます。
証人の手配
公正証書遺言には2名の証人が必要です(公証人以外の第三者)。
病院スタッフや家族は証人になれない場合があるため、行政書士や弁護士を依頼することが一般的です。

公証人の出張
公証人が病院などに出張し、遺言者の意思確認と手続きを進めます。

遺言書の作成・署名
公証人が遺言内容を読み上げ、遺言者が内容を確認します。
遺言者が署名・押印し、公正証書遺言が完成します。

      入院中に特有の注意点

      遺言者の意思能力の確認
      遺言作成時に遺言者が意思能力を有していることが必須です。公証人は遺言者と直接対話し、意思能力を確認します。
      疑いがある場合、医師の診断書が必要になることがあります。
      医師の診断書の用意
      遺言者が入院中の場合、健康状態や意思能力を証明するために、医師の診断書を用意するのが望ましいです。
      診断書には「遺言作成時点で意思能力があること」が記載されることが理想的です。

      病院側への事前連絡
      病院のルールに従い、公証人や証人の訪問が許可されるよう手配をします。
      プライバシーや遺言作成のための静かな環境を確保します。

      証人の適格性
      証人は遺言内容に直接の利害関係を持たない人でなければなりません。
      遺言者の相続人や受遺者、その配偶者や直系血族は証人になれません。

          必要書類
          以下の書類を事前に用意しておきます。

          遺言者に関する書類
          遺言者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
          遺言者の戸籍謄本

          相続人や受遺者に関する書類
          相続人の戸籍謄本
          受遺者(遺産を受け取る予定の人)の住民票

          財産に関する書類
          不動産の場合:登記事項証明書、固定資産評価証明書
          預貯金の場合:通帳のコピー
          その他財産(株式、債券など):詳細がわかる資料

          診断書(必要に応じて)
          遺言者が意思能力を有していることを証明する診断書。

          費用について

          公証人手数
          財産額に応じて手数料が決まります。
          例: 財産額5,000万円の場合、約5~7万円程度。

          出張費
          公証人の病院や施設への出張に伴う交通費や日当が追加されます(距離に応じて変動)。

          証人依頼費
          専門家(行政書士や弁護士)を証人として依頼する場合、1~2万円程度の費用がかかることがあります。

          Q:自筆証書遺言書のを法務局へ保管提出するには、本人以外でもできますか

          A:できません

          1. 提出できる人

          遺言者本人のみが法務局に自筆証書遺言を提出できます。

          ※代理人や家族が代わりに提出することはできません。

          2. 提出できるタイミング

          遺言者が存命中に限り、法務局に遺言書を提出できます。

          遺言者が亡くなった後は、法務局への提出はできません。

          3. 提出先

          遺言者の住所地、遺言者が所有する不動産の所在地、または遺言者が希望する法務局のいずれかに提出できます。

          対応可能な法務局は全国に限られていますので、事前に確認が必要です。

          4. 必要書類

          自筆証書遺言(自書した遺言書)

          本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)

          法務局の保管申請書(法務局の窓口で配布、またはダウンロード可能)

          手数料(収入印紙):1通につき3,900円(2023年時点)

          5. 自筆証書遺言保管制度のメリット

          形式不備の確認

          提出時に法務局が形式面(署名、押印、日付など)を確認します。

          ※内容の適法性や妥当性は確認しません。

          紛失・改ざんの防止

          法務局が遺言書を厳重に保管するため、紛失や改ざんのリスクを回避できます。

          家庭裁判所の検認が不要

          通常、自筆証書遺言は相続開始後に家庭裁判所での検認が必要ですが、法務局で保管した遺言書については検認手続きが不要です。

          6. 制度の注意点

          遺言書の内容自体の法的有効性は法務局で確認されません。

          例: 法定相続分を無視した内容や遺留分を侵害する内容であっても、そのまま保管されます。

          内容に不安がある場合は、弁護士や行政書士に確認してもらうことをおすすめします。

          7. 提出の流れ

          法務局へ予約

          保管申請の受付は事前予約制です。希望する法務局に連絡して予約を行います。

          窓口で申請

          遺言者本人が法務局窓口を訪問し、必要書類を提出します。

          形式確認

          法務局が遺言書の形式(署名、日付、自書など)を確認します。

          保管証の交付

          手続きが完了すると、法務局から「保管証」が交付されます。