育成仮勘定と仕掛品の違いと考え方:東京都北区 亀田行政書士事務所

仕掛品と育成仮勘定の違いを100万円分の肥料を「販売目的の作物」と「育成目的の作物」に使う例で説明します。

前提

  1. 販売目的の作物:将来的に収穫して販売することを目的とした作物です。この場合、販売目的の作物に使った資材費用は「仕掛品」として処理されます。
  2. 育成目的の作物:例えば観賞用や他の育成研究を目的とした作物で、育成段階ではすぐに収益を生み出さない場合が多く、「育成仮勘定」で費用を積み立てる形となります。

肥料費の仕訳と時系列の流れ

1. 肥料の購入時

100万円分の肥料を購入し、在庫に加えます。購入時点の仕訳は以下の通りです。

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
肥料(資材)1,000,000円現金(または買掛金)1,000,000円

2. 肥料を販売目的の作物に使用

販売目的の作物の育成に肥料を使用した際、その分の資材費用を「仕掛品」に振り替えます。

  • 例として、50万円分の肥料を販売目的の作物に使用した場合:
借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
仕掛品500,000円肥料(資材)500,000円

3. 肥料を育成目的の作物に使用

育成目的の作物(観賞用や研究用)に肥料を使用する際には「育成仮勘定」に振り替えます。育成仮勘定は将来的に費用化するまで積み立てる勘定科目です。

  • 例として、50万円分の肥料を育成目的の作物に使用した場合:
借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
育成仮勘定500,000円育成費振替高500,000円

4. 販売目的の作物の販売時

販売目的の作物が収穫され販売できる状態になった際、「仕掛品」から「売上原価」へ振り替えます。

  • 例として、販売額が200万円の場合:
借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
売上原価500,000円仕掛品500,000円
売上2,000,000円現金(または売掛金)2,000,000円

5. 育成目的の作物が収益帰化したとき

育成目的の作物が、収益化したとき(樹木が実をつけ始めたときなど)育成仮勘定をマイナスし、生物として、仕分けます

  • 例として、実をつけ始めた樹木の育成仮勘定残高が200,000円の場合
借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
生物200,000円育成仮勘定200,000円

まとめ

  • 販売目的の作物:肥料費は「仕掛品」として処理し、収穫後の販売時に「売上原価」として費用化されます。
  • 育成目的の作物:肥料費は「育成仮勘定」に積み立て、成長や使用状況に応じて「育成費振替高」として費用化されます。

  • 農業簿記は、安定した農業経営を支える重要な手段です。亀田行政書士事務所では、農業経営に役立つ基本的な会計知識や、勘定科目の使い方について分かりやすくお伝えしてまいります。ネット上でも農業簿記の情報提供例は少なく、小職も専門ではないものの、生産者の皆様の会計情報の一助となればと考え、配信しております。具体的なご相談が必要な場合は、ぜひ顧問税理士にご相談いただければと思います。

今後も農業経営に関する役立つ情報を発信してまいりますので、どうぞご期待ください。