こんにちは、亀田行政書士事務所です。本日は、農地に関する税制について詳しく解説いたします。農地は、その所在地や用途によって税制上の取扱いが異なり、売買や相続の際にも複雑な計算や手続きが伴います。本記事では、一般的な農地の税制についてお伝えしますが、詳細については顧問税理士などの専門家にご確認いただくことをお勧めします。
農地の区分と評価・課税
農地は「一般農地」と「市街化区域農地」に区分され、それぞれに応じた評価や課税が行われます。
1. 一般農地
一般農地は、農地としての評価方法が用いられます。具体的には、売買実例価格 × 限界収益修正率0.55という評価式が適用されます。また、負担調整措置が取られており、土地の評価額が急激に上昇した場合でも、納税負担が緩やかに上昇するような仕組みが設けられています。概ね千円/10aの課税額が目安です。
2. 市街化区域農地
(1) 生産緑地地区指定農地
市街化区域内に位置するものの、生産緑地地区に指定された農地については、一般農地と同様に評価され、課税も同じように行われます。課税額の目安は数千円/10aです。
(2) 一般市街化区域農地
市街化区域にある農地で、生産緑地に指定されていない場合は、宅地並みの評価が適用されます。評価は近隣の宅地の売買実例価格を基準にし、造成費相当額を控除した価格が用いられます。また、一般農地と同様に負担調整措置が適用されます。課税額の目安は数万円/10aです。
(3) 三大都市圏特定市街化区域農地
三大都市圏に所在する特定市街化区域農地については、宅地並みの評価が適用され、負担調整措置が講じられた上で、宅地と同様の課税が行われます。課税額の目安は数十万円/10aです。
農地を売却した場合の税金
農地を売却(譲渡)した場合、譲渡所得として他の所得と区分され、分離課税の対象となります。譲渡所得に対して所得税および住民税が課されます。
1. 譲渡所得金額の計算方法
譲渡所得金額は以下の式で算出されます。
譲渡所得金額 = 譲渡による収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
2. 税率
税率は以下の通りです。
- 所得税:15%
- 住民税:5% (取得後5年以内の売却の場合、税率は30%および9%)
農地譲渡における租税特別措置法の特別控除
農地を譲渡した場合、利用目的に応じて特別控除が適用されることがあります。
1. 農地利用目的の場合
- 800万円控除:農用地区域内農地を中間管理機構等に譲渡、または農業委員会のあっせん等により譲渡した場合
- 1,500万円控除:中間管理法の買入協議により農地中間管理機構に譲渡した場合
2. 転用目的の場合
- 5,000万円控除:公共事業などの理由で土地収用法等により買い取られる場合
農地を購入した場合の税制
農用地区域内農地を購入する場合には、租税特別措置法に基づき、税率の軽減や特例が適用されます。
1. 登録免許税
通常は、固定資産課税台帳登録価格(課税標準)×2%の税率ですが、特例により1%に軽減されます(令和8年3月31日まで)。
2. 不動産取得税
固定資産課税台帳登録価格 × 4%の税率が適用されますが、課税標準の1/3が控除されます(令和7年3月31日まで)。
相続・贈与による農地取得に関する税制
農地を相続や遺贈により取得した場合には、引き続き農業に使用することを条件に、相続税が猶予される制度があります。
1. 相続税の納税猶予制度
相続税の対象となる農地等の価格は「農業投資価格」とされ、国税局長が決定します(20万円〜90万円程度/10a)。相続税の一部が納税猶予される条件として、被相続人は死亡の日まで農業を営んでいたこと、相続人が引き続き農業を行うことが挙げられます。
猶予制度の適用条件
納税猶予を受けた農地を譲渡・貸付・転用、または耕作を放棄した場合(対象農地が20%を超えると)には、猶予された税額が全額確定し、納付する必要があります。ただし、特定貸付けや営農困難時の貸付け等の例外規定があります。
2. 生前贈与による農地の一括贈与
農業を営む者が、その農地の全部、もしくは採草放牧地の2/3以上を後継者に一括贈与した場合、贈与税の納税が猶予され、贈与者または受贈者が死亡した際に贈与税が免除される特例があります。贈与農地は、相続税の課税対象となりますが、相続税の納税猶予制度を適用することも可能です。
おわりに
農地の税制は非常に複雑で、多くの特例や猶予制度が設けられています。本記事では、一般的な制度についてご紹介しましたが、詳細な適用要件や手続きについては、専門の税理士等にご相談いただくことをお勧めします。亀田行政書士事務所は、農地に関する業界情報を発信しておりますが、税務に関する具体的なご質問には税理士の助言が必要ですので、ぜひ顧問税理士にお尋ねください。