農業簿記・農業税務について農業経営アドバイザー試験の過去問題は一般には公開されておらず、学習を進める中でご不安やご不明点も多いかと思います。
私が受験いたしました2024年11月開催の試験問題が少しでもお役に立てばと考え、こちらに掲載させていただきました。試験を受ける上での注意点は、択一式ではなく、入力式である点と、単位は円単位で、円の入力はない点です。
実際の設問は25問程度で、出題を元に、小職の記憶を辿り作成したものになります。ご参考にされて下さい
1.棚卸について
米の売り上げ高が960万円、その年の概算の原価が800万円としたときの決算時の仕分けをしなさい。
決算時の仕分けは次のようになります。
借方
農産物 160万円
貸方
期末農産物棚卸高 160万円
この仕分けでは、米の売り上げ高(9,600,000)と概算の原価(8,000,000)の差額である1,600,000が期末棚卸資産として計上されます。
2.育成仮勘定について
前期までの育成費が24万円、今期の育成費が9万円。今期搾乳が開始(成熟)した場合の仕訳をしなさい。
借方
家畜 330,000円
貸方
育成仮勘定 240,000円
育成費振替高 90,000円
ここでは、前期までの育成費(240,000円)は「育成仮勘定」から、今期の育成費(90,000円)は「育成費振替高」から振り替え、合計額を家畜として資産計上しています。
3.インボイス制度および経営基盤強化準備金
インボイス制度実施による農業経営影響の例
家畜共済の質病傷害共済は診療費の1割が自己負担で9割は共済金で補填されます。病傷共済金は付加税収入となる一方で、診療費は薬務の提供の対価で消費税課税仕入れになってしまいます。
指定獣医師が診療した場合、加入者に代って指定獣医師が共済金を代理受領しますが、診療費全額が課税仕入れのため、指定獣医師がインボイス発行業者であれば、診療費全額に対するインボイスが交付されます。
これに対して、農業共済組合(NOSAI)直営診療所の場合、診療費のうち共済金を支払ったとみなす金額(9割相当)はNOSAIでは対価性がないとして不課税扱いとしており、インボイスが交付されない。このため、直営診療所が診療した場合のインボイスは診療費の自己負担分のみとなる
上記について、選択肢で問う問題がありました。
また、以下のような仕訳問題もありました。
農業経営者Aさんは、税制優遇措置を活用して農業経営基盤強化準備金を積み立てることにしました。当期利益の中から700万円を積立金経理方式で仕訳してください。
解答例:
借方
繰越利益剰余金 700万円
貸方
農業経営基盤強化準備金 700万円
4.贈与税の計算について
贈与税の計算問題として、暦年課税と相続時精算課税を用いた例題。
問題 1: 暦年課税による贈与税の計算
Aさんは、父親から500万円の現金を贈与されました。この贈与に対して暦年課税方式で贈与税を計算してください。なお、Aさんには年間110万円の基礎控除が適用されます。
解答例:
1. 課税価格:500万円 – 110万円(基礎控除) = 390万円
2. 贈与税額:390万円に対する税率と控除額を基に計算
問題 2: 相続時精算課税による贈与税の計算
Bさんは、母親から800万円の不動産を贈与されました。Bさんは相続時精算課税制度を選択し、累計2,500万円の特別控除が適用されます。この場合、贈与税を計算してください。
解答例:
1. 課税価格:800万円 – 2,500万円(特別控除の範囲内) = 0円
2. 贈与税額:控除後の課税価格が0円のため、贈与税は発生しません。ただし、相続時に精算が必要です。
まとめ
農業経営アドバイザー試験は、内容もボリュームも非常に多岐にわたり、特に簿記に関する部分については、基本的な知識がないと理解が難しいと感じる方も多いかと思います。農業簿記検定の過去問とは異なる形式で出題されるため、対策が必要とされます。
農業経営アドバイザー試験では、幅広い知識が求められるだけでなく、各科目における理解の深さが必要です。そのため、事例をもとに具体的な対策を立てることが有効です。
今回の事例が、皆さまの学習計画や試験対策にお役立ていただければ幸いです。
そして、皆様の検討をお祈りします。