
1. 相続財産清算人選任の審判
家庭裁判所から相続財産清算人選任の審判書謄本が送付される。これを受領し、記録を当事者に送付して事案の詳細を把握する。
2. 財産調査
- 申立人や相続放棄をした親族等から事情及び相続財産に関する情報を聴取する。特別縁故者の意向がある者からは、分与希望財産や被相続人との関係性などを聴取し、必要に応じて陳述書を作成する。
- 選任までの相続財産を管理していた者から、相続財産の引き継ぎを受ける。
- 積極財産(取引金融機関、保険会社、勤務先等に対する預金、投資信託、株式、保険金、退職金、未払給与等)の有無を照会する。
- 消極財産(行政機関、ライフライン関係、年金事務所等に対する滞納税、未払料金、過払年金等)の有無を照会する。
- 法務局に対し、自筆証書遺言の有無を照会する。
- 公証役場に対し、公正証書遺言の有無を照会する。
- 被相続人が居住していた不動産を現地調査し、相続財産関係資料等の収集を行う。その際、動産や貴金属等の有無を調査・保全する。居住者がいる場合は連絡先を確認し、占有状況、賃借権、賃料等を確認する。
3. 預貯金の集中管理
- 「亡〇〇〇〇〇〇相続財産清算人○○○○○」名義の口座を作成し、預金を一本化する。
4. 不動産の換価準備
- 速やかに亡〇〇〇〇〇〇相続財産名義に変更登記を行う(特に競売申立てには登記が必要)。
- 換価処分に向けて不動産査定を実施する。
- 必要があれば内部の動産整理・処分を行う(有価動産の処分には権限外行為許可が必要、無価値動産の廃棄には不要)。
5. 債権者・受遺者への請求申出広告及び催告
- 家庭裁判所から選任及び相続人捜索の公告の官報掲載通知が送付されたら、速やかに債権者・受遺者への請求申出公告を行う。
- 知れたる債権者・受遺者に対しては、別途請求申出の催告を行う。
6. 初回報告書の提出
- ここまでの財産調査結果、預貯金の集約状況、今後の進行の見通し等を家庭裁判所に報告する。
7. 相続人捜索公告の期間満了/特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間の始期
- 相続人不存在が確定し、相続財産清算人に知れなかった相続債権者・受遺者は権利行使ができなくなる。
8. 積極財産の換価
- 受遺者がないこと、分与申し立て予定者の分与希望財産を確認した上で、必要に応じて投資信託の解約、株式の売却、有価動産及び不動産の売却等を行い、相続財産を預金に一本化する。
9. 相続財産が債務超過となる場合
- 報酬付与審判の申立てを行い、清算人報酬及び費用を清算。
- 清算すべき相続財産がなくなった時点で選任処分取消申立てを行う。
10. 債務超過とならない場合
- 相続債権者・受遺者に対し、民法957条2項、928条ないし935条の規定に基づき弁済を行う。
- 証明不十分な債権については弁済を拒絶する。
- 祭祀関連として、必要に応じて墓じまいや葬儀費用を相続財産から支出する事も検討する。
11. 特別縁故者から相続財産の分与申し立てがあった場合、意見書提出準備
- 分与申立てがあった場合、家庭裁判所の通知を受領し、申立書及び添付資料を確認。
- 申立人の主張が不十分な場合は追加資料の提出を求め、意見書を作成。
12.特別縁故者に対する相続財産分与の申し立て期間の終期/分与申し立てがあった場合、清算人意見書提出
- 特別縁故者に対する相続財産分与の申し立て期限の経過による全申立人の確定後、家庭裁判所から、指定された提出期限までに分与の適否および分与相当の場合には、分与財産の内容について相続財産清算人意見書を提出する。
- 分与申立人が相続財産清算人意見書を閲覧謄写した上で、主張立証した場合に、家庭裁判所が相続財産清算人の追加意見書の提出を求める例があるので、申立人の追加書面を謄写の上で追加意見書を提出する。
13.与審判があった場合
- 家庭裁判所から審判書謄本が送付されてから、即時抗告申し立ての期間(2週間)経過後、審判が確定した場合には、さらに確定通知書が送付される。
- 全部分与審判の場合、審判確定後、分与実行前に相続財産清算人報酬および費用を相続財産から受領する必要があるので、「報酬付与審判の申し立て」を行い、報酬および費用を控除した残余財産を引き継ぐ。その際、預金利息等の引き継ぎ漏れに注意する。
- 一部分与審判の場合、審判確定後、速やかに分与を実行する。なお、不動産の分与については分与を受けたものが単独登記申請できるが、速やかに登記を行わない事があるため、相続財産清算人が分与登記完了の確認をする。
- 不動産共有部分やその他の財産権の準共有持分が分与されなかった場合、民法255条に基づき他の共有者への持分帰属手続きを行う。
14. 報酬付与審判の申立て(併せて報告書提出)
- 相続財産清算人の報酬を確定させるため、家庭裁判所に報酬付与審判の申立てを行う。
15. 国庫帰属手続き
- 遺産分与が終了し、相続財産が国庫に帰属する場合、必要な手続きを実施。
15. 選任処分取消申立て及び清算終了報告書の提出
- 相続財産清算業務が完了したことを報告し、選任処分取消申立てを行う。
以上の手続きを経て、相続財産清算人の職務は完了する。