埼玉県でドローンを使った農薬散布を行う場合、準備から運用までいくつかのステップがあります。それぞれの選択肢（自分で行う場合と他者に依頼する場合）について詳しく説明します。
1. 自分で農薬散布を行う場合
準備
1. 資格の取得
農薬散布を行うには、ドローン操縦の技能資格と、農薬の使用に関する知識が必要です。
• ドローン資格: 一般的には「農業用ドローン操縦士」の認定を受ける必要があります。国土交通省認定の講習を受講することが推奨されます。
• 講習期間: 2〜3日
• 費用: 約10万〜20万円
• 農薬の知識: 農薬取締法に基づき、使用基準を理解する必要があります。自治体やJA主催の講習が参考になります。
2. ドローンと関連機器の購入
• 必要な機器: 農業用ドローン、農薬タンク、充電器、専用バッテリー、メンテナンスツール
• 費用: ドローン本体だけで50万〜200万円程度
3. 農薬散布計画の作成
• 埼玉県内の補助金を確認することで、費用を抑えられる場合があります。
• 散布する面積、必要な農薬の種類と量、使用スケジュールを作成します。
• 埼玉県の条例や農薬使用基準を確認し、散布区域が住宅地に近い場合は注意が必要です。
4. 申請と保険加入
• ドローンを飛行させるには、国土交通省への飛行許可申請が必要です。埼玉県内の地形や気象条件も考慮します。
• 保険: ドローン専用の損害賠償保険や農薬散布事故に対応する保険（年間2万〜5万円程度）。
スケジュールの例
• 3ヶ月前: 資格取得、ドローン購入
• 1ヶ月前: 農薬散布計画作成、申請手続き、農薬購入
• 当日: 天候確認後、散布実施（風速3m/s以上の場合は中止）
• 後日: 散布状況の記録と自治体への報告（必要に応じて）。
費用例
項目 費用（目安）
資格取得 10万〜20万円
ドローン本体 50万〜200万円
バッテリーや周辺機器 10万〜30万円
保険 年間2万〜5万円
農薬 面積や作物により変動
2. 他者に農薬散布を依頼する場合
準備
1. 業者選び
農業ドローンの散布代行業者やJAに相談します。埼玉県内には複数の業者が存在し、散布面積や作物に応じたプランを提案してくれます。
2. 業者と契約
散布日程や農薬の種類、散布区域を具体的に決めます。住宅地や河川に近い場合の注意点も共有します。
スケジュールの例
• 2週間前: 業者選定、見積もり依頼
• 1週間前: 散布計画と日程の確定
• 当日: 業者が全て対応
• 後日: 散布記録を受け取る（必要に応じて報告用）。
費用例
項目 費用（目安）
散布代行費用 5,000円〜1万円/10a
農薬費用 実費（依頼内容次第）
例: 1ha（10,000㎡）の田んぼで依頼した場合、
散布代行費用: 約5万〜10万円 + 農薬費用（1万〜2万円）
行政書士のサポートについて
ドローンを使った農薬散布において、行政書士がサポートできるのは法令に関する申請や手続きの代行部分です。具体的には、以下のような場面で行政書士のサポートが必要になることがあります。
行政書士に依頼する部分
1. 国土交通省への飛行許可申請
ドローンを使用する際、以下の条件に該当する場合は許可・承認申請が必要です（例: 埼玉県内の農地で住宅地や道路に近い場合）。
• 人家密集地域（DID）での飛行
• 目視外飛行や夜間飛行
• 第三者や物件上空での飛行
2. 農薬散布計画の作成・提出
自治体や農薬取締法に基づく計画書の作成や、地元のJAや関係機関への提出をサポートします。
3. 補助金申請
ドローン導入や農薬散布事業の補助金を活用する場合、必要書類の準備や提出を代行できます。
4. 土地利用や境界確認の書類作成
農薬散布エリアが共有地や境界線に近い場合、近隣住民への通知書や同意書を作成する支援。
自分で行う場合と行政書士に依頼した場合の比較
具体例: 国土交通省への飛行許可申請の場合
1. 自分で行う場合
• 手順
1. ドローン飛行許可の必要条件を調査（DID地域の確認など）
2. 国土交通省のオンライン申請システムにアクセス
3. 必要書類（飛行計画、機体情報、操縦者の技能証明）を作成
4. 書類提出と審査待ち（約10日〜3週間）
※不備があれば再提出が必要
• 手間とリスク
• 法律や規制に不慣れな場合、書類作成が難航。
• 再提出が必要になると散布スケジュールに遅れが出る可能性あり。
2. 行政書士に依頼する場合
• 手順
1. 依頼者が散布場所やドローン機体情報、使用予定日を伝える
2. 行政書士が申請書類を一括作成し、国土交通省に提出
3. 許可取得後、報告
• メリット
• 許可取得の手間が省け、申請不備のリスクを回避できる。
• 短期間で手続きが完了し、散布スケジュールを立てやすい。
• 費用
行政書士への依頼料: 約3万〜5万円
※費用は案件の内容や地域により異なります。
補助金申請の例
埼玉県内では、ドローン導入や農業技術向上に関する補助金が適用される場合があります。補助金申請では、以下のような書類が必要です。
• 申請者の事業計画書
• 機器導入の見積書
• 飛行許可の写し
• 自治体が指定するその他の証明書類
自分で行う場合
書類作成に時間がかかり、要件を満たさず却下されるリスクが高い。
行政書士に依頼する場合
最適な補助金を提案され、スムーズに申請が可能。
その他、想定される注意点
1. 法律・規制の遵守
• 薬剤の飛散防止
農薬散布は、風速や気象条件を厳密に確認する必要があります。特に、風速3m/s以上の場合は薬剤が意図せず住宅地や他の作物に飛散するリスクが高まるため、散布を避けるのが望ましいです。
• 住宅地や学校周辺での散布制限
農薬取締法に基づき、散布エリアが住宅や公共施設に近い場合、事前に近隣住民や施設への通知が必要な場合があります。
• 禁止区域での飛行
国の重要施設や空港周辺、埼玉県内の特定地域では飛行自体が禁止されている場合があるため、飛行前に地域の規制を確認する必要があります。
2. 技術面での注意
• ドローンのバッテリー管理
散布中にバッテリー切れが発生すると墜落や散布ミスの原因となります。事前に予備バッテリーを準備し、充電を徹底しましょう。
• 農薬タンクの管理
ドローンの農薬タンクが詰まりやすい場合があります。散布前にタンク内のフィルターやノズルを確認・洗浄しておく必要があります。
• GPS信号の遮断
地形によってはGPS信号が遮断されることがあり、操縦が不安定になる可能性があります。散布前に信号状況をチェックしましょう。
3. 事業運営の注意
• 責任分担の明確化
他者に散布を依頼する場合、事故や散布ミスが発生した際の責任分担を契約書で明確にする必要があります。
• ドローン保険の補償内容確認
特に散布中の事故（第三者被害や作物被害）に対応できる保険内容か確認してください。
• トラブル対応マニュアルの準備
予期せぬ墜落や散布ミスが発生した際、迅速に対応できるようマニュアルを作成しておくと安心です。
よくあるQ&A集
Q1. ドローン散布に補助金はありますか？
A: はい、埼玉県内では「スマート農業支援」などの補助金制度があります。申請条件として、農業の効率化や環境配慮が求められる場合があります。補助金は行政書士や農協に相談すると適切な情報が得られます。
Q2. ドローン散布で使える農薬の種類に制限はありますか？
A: はい。農薬取締法により、空中散布用に登録された農薬のみ使用可能です。また、地域や作物ごとに使用制限がある場合があるため、事前にラベルや自治体の指導を確認してください。
Q3. ドローンを自分で購入するかレンタルするか迷っています。どちらが良いですか？
A: 使用頻度によります。
• 購入する場合: 長期的に見るとコスト削減が可能。所有することで自由にスケジュールが組める。
• レンタルする場合: 初期費用が抑えられ、メンテナンスの手間がない。散布回数が年数回程度ならレンタルがおすすめです。
埼玉県内では1日あたり5万〜10万円でレンタル可能な業者があります。
Q4. 散布時の近隣住民とのトラブル防止策は？
A: 散布前に以下を実施してください。
1. 事前通知: 散布の日時や目的を近隣に周知する。
2. 防護対策: 農薬が飛散しないよう、風向きや散布距離を調整。
3. 相談窓口の設置: トラブルが起きた場合に迅速に対応できる体制を整備。
Q5. ドローン散布後に報告書は必要ですか？
A: 必要な場合があります。自治体やJA、または依頼主に対して以下の内容を記録し、報告することが求められることがあります。
• 散布日時
• 使用した農薬の種類と量
• 散布エリアと面積
• 天候状況
Q6. 初めてのドローン操作が不安です。どこで練習できますか？
A: 埼玉県内には、ドローン専用の練習場や講習会を提供している施設があります。認定スクールで訓練を受けることで、安全な操縦技術を習得できます。また、農業用ドローンに特化した講習を受けると、散布時のトラブルを減らせます。
Q7. 農薬散布以外の用途でドローンを活用できますか？
A: はい、農薬散布以外にも以下の用途があります。
• 作物の生育状況のモニタリング
• 鳥獣被害対策（音や光を発して害獣を追い払う）
• 精密農業（データ解析を基にした効率的な施肥や収穫）
これらを活用することで、農業の効率をさらに向上させることが可能です。
まとめ
ドローン農薬散布には法令遵守、技術面の知識、事業運営の工夫が必要です。行政書士や専門家のサポートを活用することで、安全かつ効率的な運用が可能になります。また、トラブル防止策や地域の規制を十分に理解し、準備を万全にすることが成功の鍵です。
