遺言作成中に遺言者が亡くなった場合の手続き

法定相続人が不在で、相続人が三親等以上の親族のみの場合

1. 故人の預金口座は原則として凍結される

遺言者が亡くなると、金融機関は故人名義の預金口座を凍結します。この措置は、相続財産の保全を目的としています。
法定相続人が不在の場合、相続財産は家庭裁判所の管理下に置かれ、適切な手続きの後、最終的に国庫に帰属する可能性があります。ただし、特別縁故者や債務の支払いのための請求が認められる場合は、財産の一部が該当者に引き継がれる可能性があります。

財産管理人は誰がなれるか?

  • ご親族の方が財産管理人に選任される可能性がありますが、家庭裁判所が適格性を判断します。ご親族が選任されるためには、相続財産の管理を適切に行えることを示す必要があります。
  • 弁護士や行政書士などの専門家に業務を依頼することも可能です。特に、相続財産が多岐にわたる場合や専門的な手続きが必要な場合、専門家の関与が望ましいです。

財産管理人の選任申請から承認までのスケジュール

  • 申請準備(約1~2週間):必要書類を準備します(故人の死亡診断書、戸籍謄本、不動産や預金などの財産目録など)。
  • 家庭裁判所への申立て(約1日):家庭裁判所で財産管理人の選任を申請します。
  • 審査期間(約1~2か月):裁判所が申請内容を審査し、管理人を選任します。
  • 管理人選任後:管理人は裁判所の許可を得て財産の管理・処分を行います。

ご親族の方が財産管理人に選任された場合の特別縁故者としての対応

ご親族の方が財産管理人に選任されても、特別縁故者としての財産分与を受けるためには別途家庭裁判所に申し立てる必要があります。管理人としての役割と特別縁故者としての立場は異なるため、双方の手続きを慎重に進める必要があります。

2. 死亡前の病院費用支払いについて

故人が生前にご親族の方に身の回りの世話や債務を一任していた場合、この関係は法律上「委任契約」として解釈される可能性があります。

  • 死亡前に発生した病院費用や生活費用については、親族者が遺言者の口座から引き出して支払う行為が認められる場合があります。
  • ただし、契約書がない場合、後々トラブルになる可能性があるため、金融機関や専門家に相談して適切に処理することが重要です。

3. 死亡後の葬儀費用について

故人が亡くなった後に発生する葬儀費用は、原則として相続財産から支払われます。しかし、故人の預金口座は凍結され、相続財産を管理する正式な権限を持つ者がいない場合、預金を引き出すことはできません。そのため、以下の手続きが必要となります:

  1. 葬儀費用を一時的に立て替える
  2. 家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立てる
  3. 選任された相続財産管理人が、故人の預金を解約し、葬儀費用を精算する手続きを行う

相続財産の管理権限が発生するまで、預金の引き出しや使用は法律上認められないため、慎重に対応する必要があります。

4. 特別縁故者としての財産分与請求

法定相続人が不在の場合、故人の身の回りの世話をしていた親族が「特別縁故者」として財産分与を請求できる場合があります。
特別縁故者として認められるためには、以下を家庭裁判所に証明する必要があります:

  • 故人とご親族者との具体的な関係性
  • ご親族の方が行った世話や支援の内容(病院費用の支払い、生活の補助など)
  • その支援が継続的であったこと

裁判所がこれらを認めた場合、ご請求されたご親族者は相続財産の一部または全額を取得できる可能性があります。

注意点とアドバイス

  • 故人の財産を適切に管理し、必要な手続きを行うためには、法的手続きを厳守することが重要です。
  • 財産管理人や特別縁故者の申請にあたっては、専門家(弁護士、行政書士)への相談が推奨されます。
  • 故人が遺言状を作成していなかった場合でも、就活ノートや遺志が記されたメモが見つかった場合は、法律に基づいて検討する必要があります。

まとめ

故人の財産や費用支払いについては、法律に則った手続きが求められます。特に法定相続人がいない場合、相続財産管理人の選任や特別縁故者の申請を適切に行うことが重要です。今回ように故人の生活を支えた方は、特別縁故者として認められる可能性があるため、専門家のサポートを受けながら正当な権利を主張しましょう。

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