全国営業の仕事では、出張に伴う移動時間が長時間に及ぶことがあります。その間にお客様対応や業務メール、上司との連絡、経費精算などが行われるケースも多いでしょう。
こうした移動時間は労働基準法上「労働時間」に該当する可能性が高く、賃金請求権や労務問題に発展することもあります。
今回は、移動時間の労働時間該当性、労務問題の時効、トラブル回避策について詳しく解説します。
1. 労働基準法における「労働時間」の定義
労働基準法では、「労働時間」とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間とされています。単なる移動時間は労働時間に該当しませんが、以下の場合は労働時間と認定される可能性があります。
労働時間と認定される条件
1. 指揮命令下にある場合
• 会社から指示を受け、業務を遂行している状況。
2. 業務に必要な活動を行っている場合
• 移動中にお客様対応や業務報告、経費精算などを行っている場合。
3. 自由が制限されている場合
• 移動時間中に私的な行動が取れず、業務に従事している場合。
出張移動中の具体例
• お客様対応やメール対応、上司との業務連絡 → 労働時間とみなされる
• 経費精算や移動方法の報告 → 労働時間とみなされる
• 私的な読書や休憩のみ → 労働時間に該当しない
2. 労務問題と賃金請求権の時効について
(1) 賃金請求権の時効
労働基準法に基づく未払い賃金の請求権には時効があります。
• 2020年4月以降の労働契約法改正により、時効期間は以下の通りです:
• 2年間 → 3年間(2020年4月1日以降の未払い分)
• 将来的には5年への延長も検討されています。
(2) 時効消滅を防ぐ対策
賃金請求権が時効で消滅しないようにするには、以下の方法が有効です:
① 内容証明郵便の活用
内容証明郵便を用いて未払い賃金の請求書を送付することで、時効を中断できます。
• 内容証明は、送付した事実を証明できるため、法的な証拠として有効です。
• 時効期間は、請求から再度スタートします。
② 訴訟手続きの準備
労働審判や訴訟の提起も時効を中断させる手段です。ただし、これらの手段は労使間の関係に影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
3. 労働裁判を避けるためのポイント
(1) 会社側の対策
① 就業規則の整備
移動時間や出張業務に関する規定を明確化し、労働時間とみなされる条件を具体的に定めましょう。
• 例:「移動中に業務を行った場合は労働時間とする」「業務に該当しない移動時間は含まない」など。
② 勤務時間の記録管理
移動時間中に行った業務内容を記録できる仕組みを整備することが重要です。
• 勤怠管理システムや業務報告書を活用しましょう。
③ 残業代の適切な支払い
移動時間中の業務が労働時間として認められた場合、適正な残業代の支払いが求められます。
(2) 労働者側の注意点
出張中や移動中に行った業務内容を詳細に記録することで、労働時間の証明が可能になります。
① 記録を残す
• メールの送信履歴や報告書の控えなどが有効です。
② 早期相談を心がける
賃金未払いが疑われる場合、時効消滅を防ぐために早めに弁護士や行政書士に相談することが大切です。
4. 内容証明郵便による未払い賃金請求の流れ
1. 未払い賃金を計算する
• 移動時間中の業務内容を記録し、未払い分を正確に算出します。
2. 内容証明郵便を作成・送付
• 未払い賃金を請求する旨を明記した内容証明郵便を送付します。
3. 会社側の対応を確認
• 会社が対応しない場合、労働基準監督署への相談や労働審判の準備を検討します。
5. トラブル回避のための亀田行政書士事務所からのアドバイス
(1) 未払い賃金の請求をスムーズに行う
当事務所では、内容証明郵便の作成や賃金請求に関するご相談を承っています。
時効消滅を防ぎ、スムーズな解決を図るお手伝いをいたします。
(2) 労働裁判を避けるためのアプローチ
労働裁判は労使間の関係を悪化させる恐れがあるため、できる限り早期解決を目指すことが重要です。当事務所では、労働問題に関する円満解決を目指したサポートを行っています。
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