近年、土地の所有者不明問題や管理不全の土地・建物が増加しており、これらの問題に対応するため民法が改正されました。本記事では、新たに創設された制度や見直された規定について詳しく解説します。
1. 所有者不明土地管理制度の創設
人口移動などによる所有者不明土地の増加
地方から都市への人口流出などの影響で、不動産登記簿を調査しても所有者が不明、または連絡先がわからない土地が増えています。これに対応するため、所有者不明土地の管理や処分権を有する「所有者不明土地管理人」を選任できる制度が新設されました。従来の「相続財産管理人制度」が人単位だったのに対し、新制度では土地単位での管理が可能です。
概要
裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任します。
発令要件
1. 土地の所有者またはその所在が不明であること。
2. 裁判所が命令の発令を必要と認めること。
所有者不明土地と認定されるための調査
• 登記簿・住民票:記載住所に居住していないか調査。
• 現地調査:電気メーターや管理人への確認、親族への紹介などを実施。
• 家庭裁判所への紹介申請:相続放棄や限定承認の有無を調査。利害関係者も申請可能ですが、契約書等で関係性を証明する必要があります。
2. 管理不全土地・建物制度の創設
制度概要
所有者が土地や建物を放置し、他人の権利が侵害される恐れがある場合、裁判所が管理人を選任する制度です。
所有者不明土地管理制度との違い
• 所有者不明は要件としない
• 所有者の管理処分権は制限されない
• 登記に関する規定はなし
発令要件と申立権者
• 土地や建物の不適切な管理によって他人の権利や法律上保護される利益が侵害される場合、またはその恐れがある場合に限られます。
• 原則として、土地や建物の所有者の意見を徴収します。
3. 共有制度の見直し
軽微な変更に関する規定の整備
民法251条に基づき、共有者を知ることができない場合でも共有物の変更が可能になる裁判制度が設けられました。
短期使用権の新設
• 決定基準:持分価格の過半数。
• 使用期間の上限:
• 山林:10年
• 山林以外の土地:5年
• 建物:3年
• 動産:半年
不明共有者がいる場合の手続き
• 裁判所の決定により、共有者以外の全員で変更可能。
• 持分の過半数で管理事項を決定可能。
価格賠償による共有物分割
• 裁判所が給付命令を出すことで明文化されました。
4. 相続制度の見直し
相続財産管理の見直し
1. 相続人不存在の場合の清算手続きの改正(民法952条2項、957条1項)
2. 相続財産の保全制度の改正(民法897条の2)
3. 相続放棄者の管理義務の明確化(民法940条1項)
• 相続放棄者は、相続財産を引き渡すまでその保全義務を負います。
寄与分・特別受益の規定変更
• 原則として10年間で時効となり、以降は法定相続分に統一されます。
• 改正法施行前に被相続人が死亡した場合も新法が適用されますが、経過措置により令和10年4月1日以降の適用が多くなる見込みです。
まとめ
今回の民法改正は、所有者不明土地や管理不全の土地・建物の問題に対応し、相続や共有制度の運用を円滑化することを目的としています。不動産や相続問題にお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。専門家として丁寧にサポートいたします。