【会社設立の比較】個人事業主・合同会社・株式会社のメリット・デメリット

今回、お客様から合同会社設立のご相談をいただきました。
そういえば、これまで当ブログでは合同会社設立について詳しくまとめたことがありませんでしたので、この機会に記事にしてみたいと思います。
会社を始める際には、「まずは個人事業主でスタートするべきか、それとも合同会社や株式会社を設立すべきか」で迷われる方が多くいらっしゃいます。そこで今回は、設立費用・出資者責任・設立にかかる時間・変更登記の要否・資本金といった観点から比較し、それぞれの特徴を整理していきます。

1. 設立費用の比較(ご自身で設立を想定)

形態設立時の実費(目安)主な費用内訳
個人事業主0円(開業届は無料)税務署への開業届提出のみ
合同会社約6万円登録免許税6万円(最低額)、定款認証不要
株式会社約20万円〜24万円登録免許税15万円〜、定款認証5万円、収入印紙4万円(電子定款なら不要)

2. 出資者責任の範囲

形態責任の範囲
個人事業主無限責任(事業の借金も個人財産で返済義務あり)
合同会社有限責任(出資額まで)
株式会社有限責任(出資額まで)

3. 設立にかかる時間(ご自身で設立し、書類が揃っている場合を想定)

形態期間の目安
個人事業主即日(開業届提出後すぐに事業開始可)
合同会社約1〜2週間
株式会社約2〜3週間

4. 変更登記の要否

  • 個人事業主:事業内容や屋号変更時も登記不要(税務署や役所への届出のみ)
  • 合同会社:商号・本店所在地・役員変更などは登記が必要
  • 株式会社:合同会社同様に登記が必要、かつ役員任期や株主構成の変更などで登記手続きが増える傾向あり

5. 資本金

形態最低資本金
個人事業主なし
合同会社1円〜
株式会社1円〜

6. 総合的な特徴まとめ

項目個人事業主合同会社株式会社
設立コスト◎ 最安○ 安い△ 高い
信用度△ 低め○ 中程度◎ 高い
手続きの簡単さ◎ 簡単○ 比較的簡単△ 複雑
節税の幅△ 限定的○ 法人税制利用可◎ 法人税制・役員報酬など幅広い
維持コスト◎ 安い○ 安い△ 高め
将来の資金調達△ 制限多い△ 制限あり◎ 株式発行で可能

会社設立の流れ(合同会社・株式会社)

個人事業主と異なり、合同会社や株式会社を設立するには一定の手順を踏む必要があります。
ここでは合同会社・株式会社に共通する流れを、順番・所要時間・費用・注意点を交えて解説します。

1. 印鑑の作成(代表者印・銀行印など)

  • 順番:設立準備の初期段階
  • 内容:会社の実印(代表者印)、銀行印、角印(請求書用)を作成
  • 所要時間:即日〜3日程度
  • 費用:1〜3万円程度(セット割引あり)
  • 注意点:会社実印は設立登記申請時に必須。法務局での登録も行います。

2. 会社用銀行口座の開設準備

  • 順番:印鑑作成後、登記完了後に申請
  • 内容:法人名義の口座開設
  • 所要時間:審査含め1〜3週間程度
  • 費用:口座開設自体は無料
  • 注意点:事業計画や会社概要の提出を求められることがあります。業種や資本金が少ない場合、口座開設審査が厳しくなる傾向があります。

3. 事業計画の立案・作成

  • 順番:定款作成前
  • 内容:事業目的や将来の売上見込み、資金計画を整理
  • 所要時間:数日〜2週間
  • 費用:自作なら無料、専門家依頼で5〜10万円程度
  • 注意点:事業目的は定款に記載するため、後から変更すると登記費用(3万円程度)がかかります。

4. 定款の作成(電子定款対応)

  • 順番:事業計画策定後
  • 内容:会社の基本ルール(商号・目的・本店所在地・資本金など)を決定し、定款としてまとめる
  • 所要時間:数日〜1週間
  • 費用
    • 株式会社:紙定款4万円+公証人認証5万円+謄本代約2千円(電子定款なら印紙4万円不要)
    • 合同会社:公証人認証不要、登録免許税6万円のみ
  • 注意点:株式会社は必ず公証役場で定款認証が必要。電子定款なら印紙代が節約可能。

5. 出資の履行

  • 順番:定款認証後(株式会社)または定款作成後(合同会社)
  • 内容:代表者個人口座に資本金を振込み、通帳コピーを証拠として保管
  • 所要時間:即日〜数日
  • 費用:資本金そのもの(最低1円〜)
  • 東京都での平均資本金額:株式会社約300〜500万円、合同会社約50〜100万円
  • 注意点:出資金は後で流用可能ですが、会社の信用度にも直結します。

6. 登記申請

  • 順番:出資履行完了後
  • 内容:法務局に設立登記申請(必要書類と印鑑提出)
  • 所要時間:申請から5〜10日程度で登記完了
  • 費用:登録免許税(合同会社6万円、株式会社15万円〜)
  • 注意点:提出日が会社設立日になります。書類不備があると補正指示で遅延。

7. 登記完了の確認

  • 順番:登記完了後
  • 内容:登記事項証明書(謄本)と印鑑証明書を取得
  • 所要時間:即日(法務局窓口またはオンライン)
  • 費用:謄本1通600円、印鑑証明書1通450円程度
  • 注意点:法人銀行口座や各種許認可申請で必須の書類です。

所要期間の目安(合同会社・株式会社)【実務ベース】

会社設立に必要な期間は、事業計画や定款案がすでに固まっている場合と、打合せから始める場合とで大きく異なります。
行政書士がお客様と打合せを重ねながら進める場合、下記が実務的な目安です。

手続き合同会社株式会社
打合せ開始〜登記完了約3〜4週間約4週間〜2ヶ月
事業計画・定款作成が完了している場合約2〜3週間約3〜4週間
公証役場手続き不要必須(定款認証、日程調整が必要)

実務上の所要期間が延びる主な理由

  1. 事業計画・定款内容の打合せに時間がかかる
    • 事業目的や役員構成などの決定に数日〜数週間かかることも多いです。
  2. 公証人との日程調整(株式会社)
    • 公証役場の予約状況によっては、認証まで1〜2週間待つことがあります。
  3. 資本金の準備・出資履行
    • 出資金振込や証憑準備に時間を要する場合があります。
  4. 登記完了までの法務局の処理期間
    • 申請から完了まで通常1〜2週間、繁忙期はさらに延びることもあります。

税務に関する比較についての注意

行政書士は、会社設立や許認可申請の専門家ですが、税務の詳細な計算や節税スキームの提案は法律上できません。
法人税率、役員報酬の設定、消費税の課税事業者判定、法人住民税や事業税の計算など、税金に関わる具体的な相談は必ず税理士に依頼することをおすすめします。
以下は、あくまで一般的な制度比較としてご参考ください。

個人事業主・合同会社・株式会社の税金比較

税目・項目個人事業主合同会社株式会社
法人税/所得税所得税:5%〜45%(累進課税)+復興特別所得税法人税:15%(年800万円以下の所得)〜23.2%(800万円超)法人税:15%(年800万円以下の所得)〜23.2%(800万円超)
役員報酬概念なし(事業主の所得として課税)損金算入可(定期同額給与要件あり)損金算入可(定期同額給与要件あり)
消費税年間売上1,000万円超で課税年間売上1,000万円超で課税年間売上1,000万円超で課税
法人住民税均等割なし(個人住民税は所得に応じ課税)均等割:年7万円〜(赤字でも発生)均等割:年7万円〜(赤字でも発生)
法人事業税/個人事業税個人事業税:3〜5%(業種による)法人事業税:所得に応じ課税(概ね3.4%〜5%程度)法人事業税:所得に応じ課税(概ね3.4%〜5%程度)
赤字時の負担所得税・事業税なし均等割(最低7万円)均等割(最低7万円)

税務面での特徴

  • 個人事業主
    • 設立費用ゼロで開始可能。所得税は累進課税のため、利益が大きくなると税負担が急増。
    • 赤字なら税負担はほぼゼロ(住民税の均等割もなし)。
  • 合同会社
    • 株式会社と同じ法人税率で課税。役員報酬を設定して給与所得控除を活用できる。
    • 赤字でも法人住民税の均等割(最低7万円)は毎年必要。
  • 株式会社
    • 合同会社と税率は同じだが、社会的信用度が高く、資金調達面で有利。
    • 設立・維持費はやや高め。役員報酬設定で節税効果を見込めるが、社会保険料負担は重くなる。

法人化による消費税のポイント

  • 個人事業主から法人化した場合でも、消費税の免税事業者期間は引き継がれないため、設立から最短2年間は消費税が免除されるケースが多い(例外あり)。
  • 免税期間終了後は、売上や資本金規模に応じて課税事業者となります。

法人住民税・事業税の違い

  • 法人は赤字でも均等割(最低7万円)が毎年発生。
  • 個人事業主は赤字なら住民税・事業税とも課税なし。
  • 事業規模が大きくなるほど、法人化の方がトータルの税率が低くなる傾向。

このように、税務面だけを見ても、個人事業主・合同会社・株式会社は負担や有利不利が異なります。
ただし、「どれが有利か」は利益規模・将来の計画・社会保険加入状況などによって変わるため、必ず税理士に試算を依頼することが重要です。

今後、会社を設立するためには、計画性を持った行動が欠かせません。特に合同会社や株式会社の設立では、必要な書類や手続きが複数にわたり、順序を間違えると手戻りや時間のロスが発生します。まずはその第一歩として、会社設立までの流れをスケジュール化し、漏れのないよう効率的に進めていくことをおすすめします。

合同会社設立スケジュール例

  • ○月○日 定款に記載する事業目的の決定(完了)
     将来の事業展開を見据え、適切かつ幅広い内容を設定。
  • ○月○日 社名の決定(同一名の事業者確認:同一市区町村外であれば原則問題なし)
  • ○月○日 定款の作成(完了)
     電子定款を利用することで印紙代4万円の節約が可能。
  • ○月○日 銀行への出資金払込
     便宜上、代表社員の個人口座に出資者ごとに分けて振り込み、通帳コピー等で証明を残す。
  • ○月○日 印鑑証明書の取得(三ヶ月以内のものを使用)
     設立登記に必要となるため、事前に準備。
  • ○月○日 登記申請書の作成・提出
     法務局へ申請。オンライン申請も可能だが、必要書類の不備がないよう注意。
  • ○月○日 登記完了の確認
     完了後、登記事項証明書や印鑑カードの取得を行い、会社口座開設等の次の手続きへ進む。

まとめ

会社設立には、事業形態の選択(個人事業主・合同会社・株式会社)から始まり、
設立費用、出資者の責任範囲、資本金額、設立期間、変更登記の有無など、
さまざまな要素を比較検討することが重要です。

特に、税務面では法人税率、役員報酬の取り扱い、消費税、法人住民税、法人事業税、個人事業税など、
長期的な事業計画に影響する要素が多く存在します。

合同会社や株式会社の設立は、定款作成、出資金払込、登記申請など複数の工程があり、
スケジュール管理を怠ると手続きが滞ります。
あらかじめ作業手順を時系列で整理し、
必要書類や印鑑証明書、出資金証明などを漏れなく準備することが、円滑な設立の鍵です。

会社設立は一度きりの手続きではなく、設立後の事業運営にも直結する大切なプロセスです。
行政書士は法務手続きをサポートしますが、税務や会計は税理士と連携しながら、
計画的かつ効率的に会社設立を進めることを強くおすすめします。

東京都北区 亀田行政書士事務所

✅ 無料相談受付中! お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
✅ 土日祝日も対応! お忙しい方も安心してご依頼いただけます。
電話    090-4745-8762
メール https://office-kamedanaoki.com/script/mailform/contact/
ライン https://line.me/ti/p/8w8xbIRLQC