農地の地目を「田」や「畑」から農地以外の地目に変更するには、大きく分けて**「非農地証明による方法」と「農地転用許可・届出による方法」**の2つがあります。それぞれの手続きや要件について詳しく解説します。
1. 非農地証明による地目変更
(1) 非農地証明とは?
非農地証明とは、登記簿上の地目が農地であっても、実際には農地法上の「農地」や「採草放牧地」に該当しない土地であることを証明するものです。この証明を受けることで、登記簿上の地目を農地以外(宅地・雑種地など)に変更できます。
(2) 非農地証明の取得要件
非農地証明を取得するには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 過去一定期間(通常10年以上)にわたって耕作が行われていないこと
- 農地としての利用が困難な状態になっていること
- 現況が明らかに宅地や駐車場など農地以外の用途であること
- 航空写真・地図・現地調査等で農地ではないことが確認できること
(3) 申請方法
非農地証明の申請は、該当土地の管轄農業委員会に対して行います。申請書類や手続きは自治体によって異なるため、事前に各自治体や農業委員会に確認が必要です。
2. 農地転用届出・農地転用許可による地目変更
(1) 農地転用とは?
農地転用とは、農地を宅地・駐車場・工場・資材置き場・太陽光発電施設など、農地以外の用途に変更することを指します。農地転用には、以下の2つの手続きがあります。
- 農地転用届出(市街化区域内の農地)
- 農地転用許可(市街化調整区域・農業振興地域などの農地)
(2) 農地転用届出(許可不要)
市街化区域内の農地については、農業委員会に届出をすれば許可は不要です。ただし、適用条件を満たさない場合は許可が必要になるため、事前確認が重要です。
(3) 農地転用許可(許可が必要なケース)
市街化調整区域や農業振興地域の農地を転用する場合は、都道府県知事または市町村長の許可が必要です。
また、農地の売買や貸借を伴う転用(権利移転を伴う転用)と、単なる用途変更(権利移転を伴わない転用)で手続きが異なります。
(ア) 許可の基準
農地転用許可を受けるには、以下の2つの基準を満たす必要があります。
- 立地基準
- 甲種農地・第1種農地(優良農地):原則転用不可
- 第2種農地:周辺状況によっては転用許可の可能性あり
- 第3種農地:市街化が進んでいる場合、転用許可が下りやすい
- 一般基準
- 転用計画が実現可能であること
- 転用後の土地利用が確実であること
- 転用による農業被害が最小限であること
(4) 許可が不要なケース
以下のような場合は、農地転用許可を受けずに転用が可能です。
- 国や自治体による道路・排水施設・地域振興施設の設置
- 土地収用法等の法律に基づく収用・使用
- 農地中間管理事業に基づく転用
- 災害復旧のための転用
- 認定電気通信事業者の設備設置
詳細は自治体や農業委員会に確認が必要です。
3. 違反転用に対する罰則
許可を受けずに農地を転用した場合、農地法違反となり、以下のような処分を受ける可能性があります。
(1) 行政処分
- 工事の中止命令
- 原状回復命令(元の農地に戻す指示)
(2) 刑事罰
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(個人)
- 法人の場合は1億円以下の罰金
農業委員会や都道府県知事からの是正勧告を無視すると、厳しい処分が下されるため、適切な手続きを踏むことが重要です。
4. 農地転用手続きの流れと注意点【実務編】
ここまで「非農地証明」および「農地転用許可・届出」について解説してきましたが、
実際の手続きの現場では、登記や設計、行政とのやり取りの中でいくつかの重要な注意点があります。
ここでは、農地転用を進める際に特にトラブルとなりやすいポイントを、実務の流れに沿って解説します。
(1) 登記情報の確認と名義・住所の整備
農地転用を進める際にまず確認すべきは、登記簿上の所有者情報です。
売主(または転用を行う方)の住所が、現住所に更新されていないケースや、
相続登記が未了のままになっているケースが非常に多く見られます。
この状態のままでは、所有権移転登記や農地転用申請が進まないことがあります。
そのため、まずは登記簿の住所を現住所に変更し、相続が発生している場合には相続登記を完了させておくことが必要です。
当事務所では、登記に関しては提携司法書士と連携し、スムーズな登記手続きをサポートしております。
なお、登記業務は本人または司法書士にしか行うことができません。
農地の売買契約や登記申請を進める際は、この点に十分ご注意ください。
(2) 司法書士立ち会いによる安全な売買手続き
近年では、不動産取引をめぐる犯罪トラブルも増加しています。
そのため、当事務所では安全性確保の観点から、司法書士が売買立ち会いに同席することを基本方針としております。
司法書士が関与することで、本人確認・契約内容の確認・登記申請手続きが確実に行われ、安心して取引を進めることができます。
(3) 開発行為に該当する面積の確認(500㎡ルール)
農地の転用面積が500㎡(約151坪)以上の場合、
都市計画法上の開発行為に該当し、別途「開発許可」を取得しなければなりません。
この開発許可を取得するには、申請書類や設計図面の準備、関係機関との協議が必要で、
手続きが非常に煩雑になる場合があります。
そのため、スムーズに農地転用を進めるためには、あらかじめ500㎡未満に分筆しておくことをお勧めいたします。
分筆登記を行う場合も、土地家屋調査士による測量・登記申請が必要になりますので、
当事務所では提携の土地家屋調査士と連携して対応しております。
(4) 農地転用許可(4条・5条)の際に必要な設計資料
農地転用には、用途変更を目的とする農地法第4条(自己転用)または第5条(権利移転を伴う転用)の許可申請が必要となります。
この申請には、以下のような具体的な計画資料の提出が求められます。
- 建物や施設(資材置き場・駐車場・太陽光パネル等)の配置図・平面図・立面図
- 工事の見積書や施工スケジュール表
- 上下水道の処理方法や浄化槽の設置位置を示す図面
- 排水計画・電気設備の配線計画 など
これらの資料は、申請審査の中で実現可能性・周辺環境への影響を判断する重要な要素になります。
特に、上下水道や浄化槽の計画が未確定のまま申請を出すと、審査が長期化するため注意が必要です。
(5) 行政への申請と承認後の流れ
書類が整ったら、該当土地の所在地を管轄する地域行政(市町村の農業委員会・農業振興課など)へ申請を行います。
申請後は、現地確認や関係機関との協議を経て、承認または許可が下ります。
許可が下りた後に、所有権の移転登記を行い、建築計画に基づいた工事を実施します。
工事が完了した段階で、実際の土地の用途が変更されたことをもって、地目変更登記を申請できるようになります。
(6) 地目変更登記のタイミングと注意点
よく誤解されがちですが、
所有権移転登記と地目変更登記は同時にはできません。
地目変更登記が可能になるのは、実際に建物や施設などが完成し、現況が明らかに農地でなくなった段階です。
このため、農地転用許可 → 建築・造成工事 → 工事完了 → 地目変更登記、という流れを踏む必要があります。
地目変更登記は、土地家屋調査士または土地所有者本人しか申請できません。
当事務所では、提携する土地家屋調査士に依頼し、地目変更手続きまで一貫して対応しております。
5. まとめ
農地転用の手続きは、単に「申請すれば済む」ものではなく、
登記・許可・設計・工事・地目変更といった複数の工程が密接に関係しています。
特に以下の点は、実務上の重要なチェックポイントです。
- 登記簿上の住所・名義の整備(相続登記・住所変更登記)
- 開発行為に該当しないか(500㎡超の確認)
- 具体的な工事計画・図面の準備
- 許可取得後の正しい登記と地目変更の順序確認
これらの手続きには、専門的な判断と経験が不可欠です。
亀田行政書士事務所では、司法書士・土地家屋調査士との連携体制のもと、
農地転用のご相談から登記・地目変更までワンストップでサポートしております。
農地の売却・活用・転用をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。
電話 090-4745-8762
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