
高齢の親が多額の資産を保有している場合、避けて通れないのが相続税対策です。しかし、親が認知症を発症してしまうと、従来の相続税対策はほとんどの手段が封じられてしまいます。成年後見制度では積極的な資産運用や税務対策はできないため、事前の備えが極めて重要です。
今回は、相続税が確実に発生する規模の資産を持つ父に対し、家族信託を活用して「認知症による資産凍結」を回避しながら、柔軟かつ計画的に相続税対策を行う事例をご紹介します。
ケース概要:高額資産を持つ父に認知症リスク
家族構成
- 父(80代):資産の所有者
- 母(70代):専業主婦、健康だが年齢的に不安あり
- 長男:別居、信頼関係あり
- 長女:別居、良好な関係
資産の内訳(例)
- 自宅:評価額3,000万円
- 賃貸マンション2棟:評価額1億2,000万円
- 金融資産(現預金・株など):1億円超
すでに基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える資産があり、相続税の申告・納税はほぼ確実です。そのため、生前から節税対策を講じる必要がありますが、父が高齢であり、近い将来に認知症を発症するリスクがあることが懸念点です。
家族信託の設計
項目 | 内容 |
---|---|
委託者 | 父 |
受託者 | 長男(信頼できる管理者) |
受益者 | 父(自益信託) |
第二受益者 | 母(父の死後に収益を受け取る仕組み) |
信託財産 | ・自宅 ・賃貸マンション2棟 ・必要資金を除いた金融資産 |
信託期間 | 父の死亡まで(第二受益者として母の死亡まで継続) |
残余財産の帰属先 | 長男と長女で50%ずつ |
家族信託で可能になること
1. 不動産の管理・売却・建替えなど積極的運用
受託者である長男が、委託者である父の代わりに不動産を管理・売却・再投資などできます。たとえば、
- 賃貸マンションの建替え・大規模修繕
- 相続税対策としての物件買替えや収益性向上
- 相続発生時に備えた資産の組換え(現金化)
これらは、認知症発症後であっても家族信託により可能です。成年後見制度では財産保全が基本原則のため、こうした積極策は裁判所の許可が下りにくい点が家族信託との大きな違いです。
2. 金融資産の運用・贈与
信託財産とした金融資産の一部を、相続税対策のために運用・管理することが可能です。たとえば、生命保険の契約(受取人を長男・長女に設定)や、非課税枠を利用した計画的な贈与などが検討できます。
第二受益者の設定の効果
父の死亡後には、第二受益者である母が引き続き信託財産からの利益(例:賃貸収入)を受け取れる仕組みとなっているため、母の生活保障が確実に行えます。
同時に、母が判断能力を失うリスクに備えて、母を委託者とした「第二信託契約」を組むことで、母の財産についても一貫した管理が可能になります。
遺産分割対策として信託契約を分ける方法
相続時のトラブルを防ぐために、信託契約をあえて2つに分けておくのも有効です。
例:
- 【信託①】自宅・現金の一部 → 長女への帰属分を明確化
- 【信託②】賃貸物件・残余金融資産 → 長男の帰属分を明確化
これにより、「遺産分割協議不要」となる領域を広げ、遺言との組み合わせでトラブルを未然に防止できます。
補足:任意後見・遺言との併用
家族信託を使っても、やはりすべてのニーズを1本の契約でカバーするのは難しいため、以下の補足策を講じるのが望ましいです。
●任意後見契約(委任契約付き)
医療・介護・行政手続きや施設入所時の判断などは信託では対応できません。そこで、父と長男との間で任意後見契約を締結し、将来の判断能力喪失に備えます。
●公正証書遺言
信託契約で対象外の財産(家財、未信託の預貯金等)については、遺言書で帰属先を明確にしておくことが重要です。遺言執行者の指定も併せて行うと、相続手続きがスムーズになります。
まとめ:家族信託+任意後見+遺言で万全の対策を
制度 | 主な役割 |
---|---|
家族信託 | 資産の管理・運用・承継 |
任意後見 | 医療・介護・行政対応(意思能力喪失時) |
遺言 | 信託対象外財産の明確化・遺産分割の補完 |
相続税が確実に発生するご家庭では、早期の家族信託導入とあわせて、「いつ認知症になっても資産凍結が起きない」設計をしておくことが最大のポイントです。加えて、生活保障やトラブル防止の観点から、任意後見や遺言との併用が不可欠です。
ご相談のご案内
亀田行政書士事務所では、ご家庭の構成や資産内容、相続人の意向を丁寧にヒアリングし、家族信託・任意後見・遺言の最適な組み合わせをご提案いたします。当事務所では、相続税概算算出についてもご案内をさせていただいておりますが、税の詳細については、顧問となられる税理士様へご相談されることをおすすめしております。
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