【家族信託契約書作成シリーズ②】|土日夜相談可能 亀田行政書士事務所

信託契約書を「私文書」にするか「公正証書」にするか

信託契約書を作成する際、大きな判断ポイントの一つが「私文書」で作成するか、「公正証書」で作成するか、という点です。この選択は、信託口口座の開設や、契約時の判断能力の確認手段といった実務面にも大きく関係してきます。

■ 公正証書化が必要となる場面とは?

信託契約に基づいて信託金融資産を管理するための信託口口座を金融機関で開設する場合、多くの金融機関が「公正証書で作成された信託契約書」であることを必須条件としています。つまり、信託口口座を開設するには、公正証書での信託契約が「ほぼ必須」と言えます。

一方で、信託口口座を開設せず、受託者の個人口座で信託財産を管理する場合は、必ずしも公正証書である必要はありません。しかし、ここでも注意したいのが、家族間の関係性や将来の紛争リスクです。

■ 判断能力を巡る争いを防ぐために

実務上、信託契約締結後に、家族(親族)間で以下のような争いが発生するケースがあります:

「契約を締結した当時、委託者(高齢者)には判断能力がなかったのではないか」

特に高齢の委託者が契約した場合、「こんな難しい契約を理解できたはずがない」として、契約の無効を主張されることもあります。
このような判断能力に関する争いを防ぐ補完的手段として、公正証書での契約締結が有効です。

なお、公正証書による作成以外にも、以下のような方法によって判断能力の確認を補強することが可能です:

  • 契約締結前に医師による診断書を取得する
  • 契約締結時の様子を録音・録画(Zoomなどの面談動画含む)して保管する

争いのリスクがある場合は、上記のいずれかを選択して対応することが望ましいでしょう。

■ 結論

  • 信託口口座を開設する場合:原則として公正証書が必要です。
  • 口座開設をしない場合でも、将来争いが予想されるのであれば、判断能力の確認のために公正証書や医師の診断書、動画記録等で備えるべきです。
  • 緊急性が高い場合や争いの可能性が極めて低い場合には、私文書での作成も検討に値します。

【信託契約を公正証書で作成する場合の手続きの流れ】

① 公証役場の選定

  • 委託者または受託者の住所地の近くの公証役場を選定します。
  • 作成場所は、原則として公証役場内ですが、事情に応じて出張対応も可能です。
  • ただし、出張できるのは「公証役場のある都道府県内」に限られます。
    • 例:委託者が隣県の病院に入院している場合、その県の公証人が対応します。
  • 注意点として、信託契約単体では出張に応じてもらえないこともあります。
    • この場合、公正証書遺言との同時作成であれば、出張に対応してもらえる可能性が高くなります。

② 公正証書作成までの準備期間

  • 2~3週間の準備期間が必要です。
  • 行政書士が公証役場に信託契約案を提出し、修正のやり取りを重ねて内容を確定させます。

※重要ポイント
公証人が最終的に作成する契約書は、提出した案をもとにしますが、公証役場側の雛形に基づいて修正されることがあります。
その結果、契約内容が委託者や受託者の意図と異なる形に変わることがあるため、戻ってきた契約案が希望通りかどうか、慎重なチェックが必要です。

③ 必要書類の提出(メールまたはFAX)

  • 信託契約書案(委託者・受託者)
  • 信託不動産の評価証明書登記事項証明書(これらがないと法定費用が算出できません)
  • 委託者および受託者の印鑑証明書
  • その他信託契約に登場する者(後継受託者・信託監督人・受益者代理人等)の本人確認資料

④ 公証人からの確認・修正案の提示

  • 公証人からの質問や修正案が提示されますので、原案との整合性を確認しながら内容を調整します。

⑤ 金融機関への確認

  • 公正証書案の完成後、信託口口座を開設する金融機関へ事前に契約案を提出します。
  • 場合によっては、金融機関から公証役場に直接確認が入ることもあります。

⑥ 本人立ち会いのもとで公正証書を作成

  • 委託者および受託者が本人として立ち会い、公証人の全文読み上げの上で署名・押印します。
  • なお、信託契約書の代理作成(委任状による代理人作成)はできません。

【信託契約を私文書で作成する場合の手続きの流れ】

① 信託契約書案の作成と説明

  • 行政書士が信託契約書案および信託スキームを作成し、顧客に説明します。

② 署名捺印

  • 委託者・受託者が立ち会いのもと、契約書に署名・捺印します。

※この手法は、公証役場や金融機関とのやり取りが不要なため、時間がない場合や緊急時に有効です。
ただし、以下の点には十分に注意する必要があります:

  • 信託口口座を開設することは基本的にできません。
  • 判断能力の補完(第三者的な確認手段)がありません。
  • バックデート(契約日を過去の日付にする)が形式上可能であるため、信頼性に疑義が生じるリスクがあります。

③ 私文書での信頼性補完手段

  • 契約書に確定日付を付けることで、その日付までに契約書が存在していたことを第三者機関(公証役場)が証明してくれます。
  • あるいは、宣誓認証を公証役場にて行うことで、署名が本人のものであることの証明を受けることも可能です。

※ただし、これらの手段は、契約内容の正確性を保証するものではなく、契約書の存在時点・署名の真偽を証明するための補完的手段です。

次回予告

次回は、「信託法の原則規定と別段の定め」について解説します。信託契約における条項作成の際に、なぜ「別段の定め」を設ける必要があるのか、具体例を交えてご説明します。ぜひご期待ください。

東京都北区 亀田行政書士事務所

✅ 無料相談受付中! お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
✅ 土日祝日も対応! お忙しい方も安心してご依頼いただけます。
電話    090-4745-8762
メール https://office-kamedanaoki.com/script/mailform/contact/
ライン https://line.me/ti/p/8w8xbIRLQC