財産管理委任契約とは?成年後見制度との違いと活用方法

「親が高齢になり、財産の管理や病院・介護サービスの手続きを自分で行うのが難しくなってきた」
そんなときに役立つ仕組みのひとつが 財産管理委任契約 です。

財産管理委任契約とは

財産管理委任契約とは、事故・病気・加齢などで心身の状態が思わしくなくなったときに、信頼できる親族や友人などに、本人に代わって財産管理や病院・介護サービスの手続きを任せられる契約 のことをいいます。

「委任契約」「任意代理契約」と呼ばれることもあります。

成年後見制度や任意後見契約との違い

同じ「任意」の契約でも、任意後見契約 とは前提が異なります。

  • 任意後見契約 … 本人の判断能力が低下したときに効力が発生
  • 財産管理委任契約 … 判断能力が低下していなくても、すぐに財産管理や手続きを任せられる

つまり、任意後見契約は「将来の判断能力低下に備える契約」、財産管理委任契約は「今すぐ財産管理や手続きを任せたいときに使える契約」という違いがあります。

セットで結ぶこともできる

「今は財産管理を任せたいけれど、将来的に判断能力が低下したら任意後見に移行したい」
このような場合には、財産管理委任契約と任意後見契約をセットで結ぶ ことができます。

  • 体調不良や老化で財産管理が難しくなったとき → 財産管理委任契約で対応
  • 判断能力が低下してしまったとき → 任意後見契約へ移行

このように段階的に対応できるのが利点です。

契約の際に注意すること

財産管理委任契約は契約行為なので、本人に意思能力があること が前提です。
特に高齢になってからの契約は、契約時点の意思能力を疑われる可能性がありますので、診断書など意思能力を証明できる資料を残しておくこと が大切です。

実務上の制限

財産管理委任契約は私的な契約であるため、次のような制限があります。

  • 銀行によっては委任契約だけでは対応してもらえず、窓口で本人の同席が求められることがある
  • 事前に取引のある金融機関に「財産管理委任契約での手続きが可能か」を確認しておく必要がある
  • 不動産の売却については、所有者本人の意思確認が必須のため、受任者が単独で行うことはできない

契約内容は自由に決められる

私的な契約ですので、委任する範囲(財産管理・医療介護手続きなど)、内容、期間は当事者間で自由に決めることが可能です。

👉 財産管理委任契約は、成年後見制度に比べると柔軟に利用できる制度です。
ただし、金融機関対応や不動産取引には制限もあるため、任意後見契約と組み合わせて活用すること が将来的に安心につながります。