
家族信託を設計する際、最初に重要となるのは「委託者と受益者の関係」です。
たとえば、親が自身の財産を信託財産として信託する場合、通常は親が「委託者」となります。そして受益者を子や孫など親以外の者に設定することもできます。しかし、受益者を親以外にする=実質的な所有者が変わるということになり、このときは信託財産の贈与とみなされ、贈与税が課税されます。
贈与税には110万円の非課税枠がありますが、高額な贈与になると相続よりも税負担が大きくなるため、家族信託ではこの形はあまり適しません。そのため、実務上は「委託者と受益者を同一人物にする契約形態=自益信託」を選択するのが一般的です。
不動産を信託財産とした場合の税務
信託契約が開始されると、受託者に形式的に所有権が移転されますが、実質的には受益者が所有者であるとみなされます。所有権の移転登記を行う際には、以下の税金がかかります。
- 登録免許税
- 土地:固定資産税評価額の 0.3%
- 建物:固定資産税評価額の 0.4%
なお、不動産取得税はかかりません。
信託終了時の課税関係
1. 親が亡くなって信託が終了する場合
残余財産の帰属者(例:子)が、残余財産を相続したものとみなされ、相続税の課税対象になります。
2. 親が亡くなった後、配偶者が受益者になる場合
受益権の移動が発生するため、その移動分に対して相続税が発生します。
ここでの注意点として、不動産そのものではなく、受益権が相続税の評価対象となります。評価方法は通常の不動産と同じであり、「小規模宅地等の特例」も適用可能です。
損益通算ができなくなる点に注意
信託財産から生じた収益や費用は、全て受益者のものとして扱われ、受益者が確定申告を行います。
ただし、信託財産に含まれる収益不動産について、仮に大規模修繕などで赤字になった場合でも、信託財産以外の不動産との損益通算はできません。
例
- 父:委託者兼受益者
- 子:受託者
- 信託財産:収益不動産(A)
- その他の不動産:収益不動産(B)
→ Aの不動産が赤字になっても、Bの利益とは相殺できません。
また、複数の信託契約を結んでいる場合でも、それぞれは独立しており、信託間の損益通算も不可です。このため、信託設計時には不動産ごとの収支の明確化が極めて重要です。
空き家特例が使えなくなる点にも注意
「空き家特例」は、相続した被相続人の自宅を除却または一定のリフォームをして売却する場合、譲渡所得から3,000万円の控除ができる特例です。
しかし、不動産を信託財産にしていた場合、この特例の適用ができなくなります。これは見落としやすい落とし穴なので、慎重な検討が必要です。
参考までに、譲渡税率は以下の通りです。
- 所有期間5年以下:約39%
- 所有期間5年超:約20%
例えば、3,000万円の控除が適用できた場合、600万円の税額差が出ることもあるため、注意が必要です。
次回(第8回)は「信託契約の実例」について個別に解説する予定です。
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