
■ 概要
受益者代理人とは、受益者に代わってその権利を行使する者をいいます。たとえば、受益者が認知症や知的障害のために判断能力を喪失している場合、あるいは第二受益者として複数人(長男・長女・次男など)が想定される場合に、受益者全員の意思一致が必要となり、意思決定が困難になるおそれがあります。
このような事態を避け、信託の運用を円滑に継続するために「受益者代理人」の設定が有効となる場合があります。
■ 選択肢
信託契約の設計にあたって、受益者代理人については以下の2つの選択肢があります:
- 最初から受益者代理人を置く(固定)
契約締結時点で、受益者代理人を指名し、その者に受益者の代理権限を付与しておく方法。
→ 認知症等の事由が生じる前に、予防的に権限を与えることができる点がメリットです。 - 置かない
将来必要になる可能性を考慮しつつも、現時点では受益者代理人を設けない方針。
→ ただし、この場合は後から受益者代理人を選任することはできません(信託法第138条)。信託契約に定めがない限り、裁判所による選任制度は存在しないため、将来的な対応が難しくなります。
■ <個人的見解>受益者代理人を置ける旨の条項を設けるべき理由
個人的な意見としては、法制度や税制、福祉制度の将来的な変更可能性を踏まえると、
「必要に応じて将来、受益者代理人を置くことができる旨」
を信託契約に明記しておくことが最も望ましいと考えます。
このようにしておけば、受益者本人の判断能力の低下や、複数受益者間での意見調整困難といった事態が発生した際に、柔軟に対応でき、信託の円滑な運用を損なうことがありません。
■ 受益者代理人の資格要件
- 未成年者およびその信託の受託者は、受益者代理人となることができません。
- 上記以外であれば、親族・法律家・法人など誰でもなることができます。
■ 選任方法(信託法 第138条)
受益者代理人は、信託契約の中に「受益者代理人を設ける」旨の明文の定めがある場合に限り、選任が可能です。
- 契約に定めあり → 選任可能
- 契約に定めなし → 選任不可(裁判所による職権選任も不可)
→ この点は、信託監督人の制度(信託法第142条)とは大きく異なります。
■ 受益者代理人の権限(信託法 第139条)
受益者代理人には、信託契約に別段の定めがない限り、受益者のすべての権利を代理して行使する権限があります。
具体的には以下のような権利が挙げられます:
- 信託事務の処理状況報告の請求
- 帳簿書類の閲覧・写しの請求
- 受託者の行為差止め請求
- 受託者の利益相反行為への承認
- 受託者の辞任への同意
- 信託内容の変更に対する合意 など
受益者代理人が選任されると、これらの権利は受益者本人が行使することはできなくなります。
■ 報酬について(信託法 第144条・127条③)
受益者代理人は、信託契約に報酬支払いの定めがある場合に限り、受託者に対して報酬の請求をすることができます。
→ 契約に定めがなければ、無報酬での就任となります。
■ 活用の代表例
- 受益者が高齢で認知症を患っている、またはその可能性が高い
- 受益者が重度の知的障害を有しており、意思表示が困難
- 第二受益者に複数人が指定されている場合(兄弟姉妹間など)
→ 全員の意見一致が求められる場面では、実務上の停滞が発生しやすいため
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