
相続手続きにおいて、「相続人の一部と連絡がつかない」「音信不通のまま相続が発生した」というご相談は、意外に少なくありません。
特に、相続人のうち一人が不在のまま、遺言によって遺産分割を明確に決めた場合、その後にその相続人が現れて「遺留分侵害額請求」をしてくるケースもあります。
本記事では、遺言・信託等を用いて、こうした相続トラブルにどう備えるべきか、行政書士の視点から具体的な対策を解説します。
遺留分とは?―遺言で自由に分けられない「最低限の取り分」
日本の相続制度では、たとえ遺言で「財産をすべて〇〇に渡す」と書いても、それが他の法定相続人の「遺留分」を侵害していれば、金銭での請求を受けるリスクがあります。
遺留分とは、一定の法定相続人に認められる「最低限の相続分」。具体的には、配偶者・子・直系尊属が該当し、兄弟姉妹には認められません。
【対策①】遺留分を侵害しない範囲で遺言書を作成する
相続トラブルを防ぐための第一歩は、遺留分を尊重した内容の遺言書を作成することです。
具体例:
相続人:妻、長男、長女
相続財産:1億円
この場合の遺留分割合は以下の通り:
- 妻:1/2 × 1/2=1/4(2,500万円)
- 長男:1/2 × 1/4=1/8(1,250万円)
- 長女:1/2 × 1/4=1/8(1,250万円)
仮に「妻に8,000万円、長男と長女にそれぞれ1,000万円ずつ」遺贈する遺言を作成すると、長男・長女の遺留分(1,250万円)を各250万円ずつ侵害していることになります。
これを回避するには、各人の遺留分を下回らない範囲で財産配分を決めておくことが重要です。
【対策②】遺留分の放棄を家庭裁判所で行う
被相続人が生存中に、相続人に「遺留分を放棄してもらう」という方法もあります。
この場合、相続人の意思確認と公平性確保のため、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1049条)。
被相続人の意向を尊重して特定の相続人に多くの財産を渡したい場合など、他の相続人がそれを理解しているのであれば、生前に遺留分放棄の手続きをしておくことで後の争いを防げます。
【対策③】行政書士を「遺言執行者」として指定する
遺言内容の確実な実現には、遺言執行者の指定が効果的です。
行政書士も遺言執行者に指定可能で、公正証書遺言・自筆証書遺言のいずれにも明記できます。
遺言書記載例:
「本遺言の執行者として、東京都〇〇区△△町○番地、行政書士 亀田直樹(生年月日:昭和○○年○月○日)を指定する。」
遺言執行者を通じて、財産の名義変更や預貯金の解約などもスムーズに行うことができ、連絡の取れない相続人への対応も円滑になります。
【対策④】信託を活用する場合の注意点
信託を利用して、あらかじめ財産の帰属先を決めておけば、原則としてその財産は相続財産に含まれず、遺留分請求の対象外になります。
しかし、ここには重要な落とし穴があります。
注意すべきポイント
- 東京地裁平成30年9月12日判決では、「遺留分逃れ(潜脱)」を目的とした信託については、信託財産そのものではなく、信託受益権が遺留分侵害の対象となると判断されました。
- この判決は控訴審で和解となり、確定判例ではありませんが、信託の設計・目的次第では争いになる余地が残るという実務上のリスクがあります。
- 「帰属権利者が確定している」=「絶対に遺留分請求されない」わけではありません。
したがって、信託を用いる場合は、相続や贈与との関係性・受益者との関係・期間・意図などを慎重に設計しなければ、想定外の訴訟リスクを招くおそれがあります。
まとめ:相続トラブルを防ぐには「想定外の行動」を想定しておくことが重要
音信不通の相続人が後から現れ、遺留分請求をしてくる――
これは現実に起こりうる事例です。
こうしたリスクに備えるためには、以下のような複合的な対策を検討しておく必要があります。
- 遺留分を侵害しない遺言書の作成
- 生前の遺留分放棄手続き
- 行政書士を遺言執行者に指定
- 信託の慎重な設計
当事務所では、相続人間のトラブルを未然に防ぐための遺言書作成支援、家庭裁判所申立てサポート、信託契約設計などを幅広くサポートしています。
相続に不安がある方、音信不通の相続人への備えを検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。
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