
- 第1回:生成AIで作成された契約書のリスクと法的基礎
- 第2回:契約書の基本構成と押印、印紙の取り扱いについて
- 第3回:契約書の読み方、どこをチェックすべきか
- 第4回:事例集① 土地建物売買契約書
契約書は、ビジネスにおけるトラブルを防止し、当事者の権利義務を明確にするための非常に重要な文書です。しかし、「どこを見ればよいのかわからない」という声も少なくありません。
今回は、契約書の条文で特にチェックしておきたいポイントを、民法や実務経験に基づきながら詳しく解説します。企業経営者、フリーランス、個人事業主、発注・受注側を問わず、実務で役立つ内容です。
1. 契約書の「目的」条項を軽視してはいけない理由
契約書の第1条付近にあることが多い「目的」条項は、契約で何を達成しようとしているかを明記する部分です。これは、契約内容の解釈や紛争時の判断材料になります。
たとえば、オーダーメイドのソフトウェア開発や特注製品の製造契約においては、「目的」の記載が不明瞭だと、完成品が“契約どおり”か否かの判断ができなくなります。
民法562条の「契約不適合責任」にも関わる重要な条項です。目的が曖昧だと、納品物に対するクレームや損害賠償請求の根拠にもなりかねません。
2. 支払期限は必ず明記を|掛け売りは初回からしない判断を
契約書に支払期限の記載がない場合、民法533条により「同時履行の抗弁権」が生じます。つまり、商品と代金は“同時に交換”することが原則になります。
しかし、実務では「掛け売り」(後払い)取引が多く存在します。当事務所では、初回取引は掛け売りにしない方針をお勧めしております。信用関係のない初回のお客様とは、前払いまたは半金入金の条件で契約書を作成しています。
これは、資金繰りの安定や取引リスクの軽減に加え、既存顧客への円滑なサービス提供のためにも重要です。支払期限は曖昧にせず、契約書に明記し、双方が確実に確認することを徹底しましょう。
3. 支払方法と手数料の負担者も確認を
現金払いか、銀行振込か、クレジット決済か――支払方法を明確にしないと、実務上トラブルになります。
特に振込手数料の負担者については、民法485条に基づき、原則として債務者(支払う側)の負担とされています。ただし、債権者が手数料を高額にしているなど、特段の事情がある場合は例外です。
契約書には「○○銀行への振込」「振込手数料は乙の負担」など、具体的な支払い方法と責任分担を記載するようにしましょう。
4. 著作権の帰属と著作者人格権に注意
ホームページ、ロゴ、チラシなど、創作物の制作契約では著作権の取り扱いがトラブルの原因になることが多いです。
著作権法17条では、著作権は「著作者に自動的に発生」することが明記されており、原則として制作側(受注者)が著作権を保有します。
依頼者側が自由に編集・修正できるようにするには、「著作権譲渡条項」を契約書に盛り込む必要があります。
【例文】
納入物に関する著作権は、乙が従前から保有していた著作物を除き、委託料完済時に甲から乙へ移転する。著作権譲渡の対価は委託料に含まれる。乙は甲に対し著作者人格権を行使しない。
※著作者人格権は譲渡できませんが、「行使しない旨」の合意は有効です。
5. 契約解除条項は民法と契約実務の両面で
契約解除は民法541条・542条に定められていますが、実務では倒産・取引停止などを理由とする特約解除条項(法定外解除)を加えるのが一般的です。
【例文】
一方当事者が支払停止・破産・民事再生申立・差押等を受けた場合、相手方は催告なしに本契約を解除できる。
こうした条項は、万一のリスクヘッジになります。
6. 損害賠償の範囲を明確に
損害賠償の範囲は、民法415条(債務不履行)と416条(通常損害および特別損害)に基づきます。
特に、納期遅れによる営業損害や弁護士費用までカバーするかなど、契約での明記が重要です。
【例文】
損害賠償の範囲は目的物の対価を上限とし、合理的な範囲で制限するものとする。
※逆に、委託者側の立場であれば、「合理的な弁護士費用を含む」と明記し、範囲を広げることも検討できます。
7. 契約期間と更新方法の記載を忘れずに
契約期間が定められていないと、一方的な解除や価格変更の申し出が可能になってしまいます。
継続的な取引契約には、開始日・終了日を明記し、自動更新の有無や更新条件を定めるのが一般的です。
8. 秘密保持条項と個人情報保護
秘密情報および個人情報は、業務上必ず取り扱う情報です。
秘密保持契約(NDA)を別途締結する場合もありますが、契約書内に盛り込むのが実務的です。
【ポイント】
- 口頭開示の場合、開示後30日以内に秘密である旨を文書で通知する
- 漏洩防止、第三者提供の禁止
- 司法・行政機関への提出時の対応 など
9. 反社会的勢力でないことの表明確約
コンプライアンス対応として、契約相手が反社会的勢力でないことの確約条項は必須です。
解除事由としても機能します。
10. 債権譲渡禁止条項で不測の事態に備える
取引相手が反社会的勢力や第三者に債権を譲渡してしまうリスクを防ぐため、債権譲渡禁止特約は有効です。
11. 契約変更の合意方法
「契約の内容を変更する場合は、書面にて当事者双方が合意すること」と明記しましょう。メールや口頭での合意は証拠として弱い場合があります。
12. 管轄裁判所の合意を忘れずに
トラブル発生時、どこの裁判所で争うかを定める「合意管轄条項」は重要です。
「専属的合意管轄」とすることで、予期せぬ遠方での裁判を回避できます。
【まとめ】契約書は“読む力”が問われる文書です
契約書は単なる儀式ではなく、実務におけるルールブックです。
契約書を作成する際も、チェックする際も、「何を取り決めて、何を防ぎたいのか」を明確にすることが大切です。
亀田行政書士事務所では、事業者様の契約書作成・リーガルチェックを多数ご依頼いただいております。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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