
家族信託は、高齢の親が所有する財産を安全かつ柔軟に管理・運用するために非常に有効な制度ですが、すべての法律上のニーズを単独で満たせるわけではありません。今回は、父の将来的な施設入所を見据えて自宅を売却する必要が生じたケースをもとに、家族信託を中心に、任意後見や遺言を併用する意義についてもご説明します。
ケース概要:父が施設入所を控え、自宅の売却資金を準備したい
家族構成
- 父(80代):自宅で一人暮らし。妻(母)は既に他界。
- 長男:独立して別居。
- 長女:独立して別居。
現状と課題
父は訪問看護などを利用しつつ在宅で暮らしていますが、数年以内に老人ホーム等の施設への入所を検討しています。施設費用をまかなうには、現在の貯蓄だけでは不足が見込まれ、自宅の売却による資金確保が不可欠な状況です。
一方、父は高齢であり、将来認知症などで判断能力を喪失するリスクがあることから、通常の名義人本人による売却は困難になる可能性があります。ここで、家族信託が効果を発揮します。
家族信託の活用
項目 | 内容 |
---|---|
委託者 | 父 |
受託者 | 長男 |
受益者 | 父(自益信託) |
信託財産 | 父名義の自宅不動産 |
信託期間 | 父が死亡するまで |
残余財産の帰属先 | 長男と長女で50%ずつ |
この信託契約により、父が判断能力を喪失した後でも、長男が受託者として自宅を売却し、売却代金を信託口口座で管理することが可能になります。施設費用の支払いや生活支援を成年後見制度に頼らずに実現できるという点で非常に有効です。
それでも「家族信託だけでは不十分」な理由と対策
家族信託が万能に見える一方で、次のような「信託だけでは対応できない領域」が存在します。
1. 医療・介護・行政手続きへの対応には「任意後見」が必要
信託契約の受託者は、あくまで信託財産に関する管理権限しか持ちません。そのため、以下のような行為には関与できません:
- 病院への入院手続きや同意書への署名
- 介護サービス契約の締結や施設入所手続き
- 年金・介護保険等の行政手続き
こうした「財産以外の本人の意思表示」が求められる行為には、あらかじめ父と長男との間で任意後見契約を結んでおくことが不可欠です。
この契約により、父の判断能力が衰えた後には、長男が「任意後見人」として医療・介護・行政手続き全般を代行できるようになります。
2. 遺産分割の明確化と対外的な効力には「遺言」が必要
信託契約では、死亡後の信託財産(残余財産)の帰属先を定めることができますが、「信託していない財産」には効力が及びません。たとえば、次のような財産です:
- 預貯金や車など、信託対象外の動産
- 死後に発生する生命保険金など
- 日常の家具・家電、骨董品など
これらの遺産については、遺言書を作成することで相続人間のトラブルを防止できます。とくに、遺言によって「遺言執行者」を指定しておけば、遺産整理もスムーズになります。
まとめ:三位一体で支える高齢期の備え
項目 | 目的 |
---|---|
家族信託 | 財産の管理・売却・生活資金の確保 |
任意後見 | 医療・介護・行政手続きの代行 |
遺言 | 遺産分割の明確化と信託対象外財産の対応 |
高齢の親の財産をめぐる家族の備えには、「家族信託」「任意後見」「遺言」の三つの制度を組み合わせることが不可欠です。それぞれの制度が補完し合うことで、親の意向を尊重しながら、相続人間のトラブルも予防することができます。
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