成年後見制度は家族にとって使い勝手が悪い?

ご相談の中には「過去に成年後見制度を利用した」という方も少なくありません。ところが、良い感想を述べる方は多くないのが実情です。

例えば、親の財産がかなりあったために、家庭裁判所が選任した後見人が弁護士となったケースでは、月額6万円の報酬 が発生しました。年間で72万円、10年間続けば 720万円 にもなり、「報酬が高すぎる」と不満を持たれるご家族も少なくありません。

後見人の報酬はどう決まる?

成年後見人や後見監督人への報酬は、家庭裁判所が仕事内容や本人の財産状況などを考慮して決めます。
目安としては以下のとおりとされています。

  • 財産が1,000万円以下 → 月額2万円程度
  • 財産が1,000万~5,000万円以下 → 月額3万~4万円程度
  • 財産が5,000万円以上 → 月額5万~6万円程度

これに加え、業務が特に複雑・困難な場合は「付加報酬」が認められることもあります。さらに、訴訟や調停、遺産分割、不動産売却などを行った場合、その都度追加の報酬が支払われる仕組みです。

もちろん報酬は本人の財産から支払われます。

お金の使い方に不満が多い理由

成年後見制度の利用で最も多い不満は、「本人のお金の使い方が制限される」 という点です。

  • 母親の生活費を出してほしいと頼んだところ、「年金でまかなえませんか?」と言われた。
  • 夫婦で老後資金として貯めていた口座なのに、母親の生活費の支出を渋られた。
  • 車椅子の父を介護タクシーで旅行に連れて行きたいとお願いしたら、「本人が希望していないのでは? ご家族が負担したらどうですか」と言われた。

このようなケースは珍しくありません。

成年後見制度の基本はあくまで 「本人の財産は本人の生活のために使う」 という原則です。そのため、家族が慣習的に本人の財産を旅行や娯楽などに使っていたとしても、後見開始後は認められないことが多いのです。

認められる支出と認められない支出

原則として認められるのは以下のようなものです。

  • 本人の生活費
  • 医療費
  • 介護サービスの利用料や施設費
  • 税金や負債の返済
  • 成年後見人・監督人への報酬や後見事務に必要な費用

さらに、本人に扶養義務のある配偶者や障害のある子どもの生活費も支出可能です。

また、法事の費用や冠婚葬祭に伴う祝儀・香典といったものも「常識の範囲内」であれば認められるケースがあります。

👉 つまり、成年後見制度を利用すると「口座は解凍されるが、自由に使えるわけではない」という大きな制約があるのです。
この「使い勝手の悪さ」が、家族にとって大きな不満の原因となっています。