
信託監督人とは、受益者が現に存在する場合において、その受益者のために受託者を監視・監督する者をいいます。
主な活用例としては、たとえば受益者が高齢で判断能力に不安がある場合や、未成年である場合などに、受託者として信託を管理・運用する立場の者(たとえば受益者の子など)に対して、第三者的な立場で監督する役割として置かれることが多いです。
なお、信託監督人は「監督することのみ」が役割であり、受益者代理人のように受益者の権利を代わって行使することはできないという点に注意が必要です。
信託監督人の選任について
信託監督人については、信託契約において「誰を信託監督人とするか」または「信託監督人を置くかどうか」について、定めることができます(信託法第130条)。
- 信託契約に定めがある場合には、契約に基づいて信託監督人を選任することができます。
- 一方、信託契約に定めがない場合には、原則として信託監督人は選任されません。
ただし、ここで受益者代理人と異なるのは、受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別な事情がある場合には、利害関係人の申立てによって家庭裁判所が信託監督人を選任することができるという点です。
受益者代理人の場合、このように裁判所が職権または申立てにより選任する制度は存在していないため、ここは大きな違いとなります。
信託監督人の権限について
信託監督人の権限は、基本的に受益者のために、受益者が本来持っている「受託者を監督する権利」を代わって行使することにあります(信託契約で別段の定めがある場合を除く)。
ただし、信託監督人がいる場合でも、受益者自身が受託者を監督する権利を持ち続ける点が重要です。
これは、受益者代理人とは異なる点であり、受益者代理人が選任された場合は、受益者自身は監督権を含む信託に関する権利を行使できなくなるため、明確に区別しておく必要があります。
信託監督人が有する代表的な権限は、以下のとおりです:
- 受託者に対する信託事務処理状況報告書の提出請求権
- 帳簿・書類等の閲覧・写しの請求権
- 信託の目的に反する行為等に対する差止め請求権
これらのとおり、信託監督人の権限は「受託者を監督することに限定されており、意思決定には関与しない」という特徴があります。
たとえば以下のような事項は、信託監督人の権限には含まれません:
- 受託者の利益相反行為に対する承認
- 受託者の辞任への同意
- 信託の内容変更への同意 など
ただし、これらの点についても、信託契約で別段の定めを設けることにより、一定の行為(例:不動産の売却や高額支出など)には信託監督人の同意を要するとする条項を盛り込むことで、受託者の権限に制限を加えることも可能です。
信託監督人の報酬について
信託監督人が報酬を受け取ることができるかどうかは、信託契約に定めがあるかどうかによって決まります。
- 信託契約に「報酬を受け取る」旨の定めがある場合には、受託者に対して報酬を請求することができます。
- 一方で、信託契約に定めがない場合には、報酬を請求することはできません。
したがって、信託監督人を置く場合には、その報酬の有無・額・支払い方法などを契約書の中で明確に規定しておくことが望まれます。
以上のとおり、信託監督人は受託者の行動をチェックすることで信託の適正な管理運営を確保する重要な役割を担いますが、その役割は監督に限定され、受益者代理人とは機能も法的な位置付けも異なる点に十分注意が必要です。信託設計においては、ケースごとに受益者の状況や家族関係を丁寧に検討したうえで、信託監督人を置くかどうか、またその権限・報酬等をどう定めるかを慎重に判断すべきです。
まとめ:信託監督人の適切な設置は信託運営の信頼性を高める鍵
信託監督人は、受託者による信託事務の適正な執行を外部から監視する役割を担い、特に受益者が高齢・未成年・判断能力に懸念がある場合などに、その重要性が増します。
信託監督人の役割はあくまで「監督」に限定されており、受益者代理人のように意思決定を代行する権限はありません。そのため、両者の役割や権限、法的位置づけの違いを明確に理解し、契約時に混同しないよう注意が必要です。
また、信託監督人は原則として信託契約に基づき選任されますが、家庭裁判所による選任が可能な制度的仕組みがある点でも、他の信託関係者とは異なる特徴を持っています。
信託監督人を置くか否かは任意ですが、置く場合には以下の点を契約で明確にしておくことが信託の円滑な運用に寄与します:
- 監督人の具体的な権限と関与範囲
- 同意が必要な特定行為(例:不動産売却、信託の一部変更など)
- 報酬の有無とその額、支払い方法
信託は長期にわたる運用が前提となることが多いため、将来的な信託の安定性・透明性を担保する制度設計として、信託監督人の設置は非常に有効な手段となります。
信託の目的、家族構成、受益者の状況を踏まえたうえで、信託監督人をどのように位置づけるかを柔軟かつ戦略的に判断することが、安心して信託制度を活用するための大切なポイントとなります。
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