【最新版】公正証書の電子化がスタート!〜交渉人法改正で変わる手続きと実務対応〜

亀田行政書士事務所公式ブログ

1. 公正証書の電子化とは?

2024年の交渉人法改正により、これまで「紙の原本」で作成されていた公正証書が、原則として電子データ(電磁的記録)で作成されることになりました。
つまり、今後の公正証書は紙原本からPDF原本へと完全に移行していくことになります。

電子化の対象外となる例外

以下のような場合には、引き続き紙による作成が認められます。

  • 保証意思宣明公正証書
  • 成年被後見人の遺言(立会医師の署名が必要)
  • 添付資料が電磁的記録にできない場合
  • システム障害や停電など、技術的トラブルが発生した場合

2. 公正証書作成の新しい流れ

電子公正証書の作成は、これまでと大きく流れが変わります。

【作成手順】

  1. 公証人・行政書士がWordで案文を作成し、PDF化して「原本」となる電子データを作成
  2. 当事者(嘱託人)らが内容を確認し、電子的に署名(サイン)を行う
  3. 公証人が電子署名を付与し、電子証明を行う
  4. これにより、PDFファイルが公正証書原本として確定します

完成した公正証書は、「正本」「謄本」としても電磁的記録で交付可能となります。
ただし、強制執行(令和10年まで)は紙ベースで行う必要がある点には注意が必要です。

3. 電子化のメリット

① リモートでの作成が可能に

これまで物理的に公証役場へ出向く必要があった手続きが、今後は技術的にリモートでの作成も可能になります。

② 電子データでの保存・管理

公証人は原本および付属書類を電子データとして保存。
依頼者(嘱託人)側も電子製本・電子謄本として管理できます。

③ 改ざん防止と真正性の向上

PDF内の電子署名情報はAcrobat Readerで確認可能
真正性・改ざん有無の確認が容易となり、法的な信頼性がさらに高まります。

4. 電子公正証書作成の実務手続き(参考:当事務所での事例)

事前準備

  1. 行政書士が嘱託人からの依頼を受け、公証人へ相談申込み
  2. 行政書士が嘱託人から依頼を受けた内容を元に案分を作成し、それを元に公証人が案文を提示
  3. 行政書士が嘱託人と内容・日程を調整し決定

作成当日

  1. 公証人による本人確認
  2. 作成意思の確認
  3. Word案文を読み上げ・確認
  4. 公証人が原本用PDFを作成
  5. 嘱託人が電子サインを実施
  6. 公証人が電子サイン・電子署名を実施
  7. 原本を登録

※④〜⑦が電子化に伴う追加手順です。

作成後の交付

  • 正本はCD-Rで交付
  • 嘱託人の申出がある場合、公証人が紙謄本を交付・送達

5. よくある質問(Q&A)

Q1:全国の公証役場で電子公正証書は作成できますか?
A:東京都では2025年10月末までに全公証役場で対応完了予定です。他府県は順次導入が進む見込みです。

Q2:嘱託人が高齢で電子署名ができない場合は?
A:例えば、ご高齢で手が震えてしまい、マウスやタブレットで署名がうまくできない場合や、身体の事情で指や手を動かすことが難しい場合でも大丈夫です。
そのような場合には、公証人が事情を確認し、その旨を記載することで、嘱託人本人の電子署名がなくても公正証書の作成を完了することができます。
本人の意思が確認できていれば、署名行為そのものが困難でも手続きは有効に行われます。

Q3:印紙の貼付は必要ですか?
A:不要です。電子データには印紙税は発生しません。

Q4:作成中にパソコンがフリーズした場合は?
A:その時点での作成は無効となり、再作成が必要です。

Q5:電子署名が書きづらい、文字が汚くても大丈夫?
A:問題ありません。本人の署名であることが重要です。

6. 行政書士によるサポート

公正証書の電子化は、法改正後も実務上の詳細がまだ整備途中であり、全国的にも情報が少ない分野です。
当事務所では、公証人との連携を取りながら、電子公正証書の作成支援、電子署名環境の整備、嘱託人様への事前説明などをワンストップでサポートいたします。

電子化によって、今後の遺言、公正証書契約、離婚協議書、金銭消費貸借契約などもすべてオンラインで完結できる時代になります。
ぜひ一度ご相談ください。