
すべての財産を家族信託に組み込めば、遺言は不要になるのではないか?
家族信託のご相談を受ける中で、「すべての財産を信託に組み込めば、もう遺言は書かなくてもよいのではないか?」というご質問をよくいただきます。
理論的には、「すべての財産を正確に信託に含めて、残余財産の帰属先までしっかり設計していれば」、遺言の主な機能(財産の承継先の指定)は家族信託でカバーすることができます。
しかし、実務上は遺言との併用を強くおすすめします。その理由を以下に整理します。
1.本当に「すべての財産」を信託できるとは限らない
信託契約時にすべての財産を把握し、完全に信託に組み込むのは理論上は可能でも、実際には以下のようなケースがあります。
- 契約後に新たな預貯金口座ができた
- 給与、年金、事業収入などで財産が増えた
- 日常的に使っていた生活費が信託の対象から漏れていた
- 貴金属、自動車、家具などの動産が信託に含まれていなかった
このような「信託から漏れた財産」は、本人が亡くなった後には相続財産となるため、遺言がなければ相続人による遺産分割協議が必要になります。
2.信託契約では扱えない財産・権利がある
家族信託は「信託財産」として明示されたものしか管理・承継できません。そして、そもそも信託の対象にならない財産・権利もあります。
- 死亡退職金や遺族年金の受給権
- 一部の生命保険金受取権
- デジタル資産(仮想通貨やオンライン口座など)の一部
- 著作権の人格的側面など、一身専属的な権利
こうした財産を誰に承継させるかについては、遺言で明示しておく必要があります。
3.信託契約が機能しなかった場合の「保険」としての遺言
家族信託は、受託者や契約内容の不備によって期待したとおりに機能しないこともあります。例えば、
- 受託者が先に亡くなった、辞任した
- 信託契約に不明確な部分があった
- 信託財産の名義変更が完了していなかった
といった場合には、信託契約がうまく活用されない可能性もあるのです。
このようなときに、遺言があればバックアップとして活用できます。
4.遺言は信託を補完する「セーフティネット」
家族信託がカバーするのは、あくまで信託財産に限られます。一方、遺言はそれ以外の財産、つまり
- 「信託しなかった財産」
- 「信託契約では管理しきれない権利」
- 「想定外に発生した財産」
を、包括的に誰に承継させるかを示すための大切な手段です。
「その他一切の財産は○○に相続させる」という簡潔な内容でも、残されたご家族の手続きを大幅に簡略化できます。
5.遺言は簡易に残すことも可能
現在では、法務局の遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言を確実に保管し、家庭裁判所の検認手続きも不要になります。
信託と併せて、簡素な遺言書を1通準備しておくことは、今の相続実務では最も安心できる方法です。
まとめ
項目 | 家族信託 | 遺言 |
---|---|---|
発効のタイミング | 生前から発効 | 死亡後に発効 |
対象となる財産 | 指定された信託財産のみ | 所有者のすべての財産 |
機能 | 財産の管理・承継 | 承継のみ |
柔軟性 | 高い(次世代への承継も可能) | 限定的 |
補完性 | 単独では不十分なことも | 信託を補完できる |
結論
すべての財産を家族信託に組み込んでも、実務上は遺言の併用が必須です。
むしろ、信託と遺言は相互に補完し合うことで、想定外のトラブルを防ぎ、大切な財産を確実に承継することが可能になります。
信託契約を設計する際には、「簡易な遺言」もセットで準備することが最善の対策となります。
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